浦添市伊祖生まれ、伊祖育ちの大将、銘苅善明さん(57)が迎えてくれる。頭にのせてかれこれ8年になるというハンチング帽は、つばが少し擦り切れている。11席ある黒塗りのカウンターも、ところどころ剥げて白木がのぞく。創業35年目の店の味わいだ。

1日限定5食の「ミルフィーユかつ定食」(1300円)

創業当時に出していたソースつぼは一つ残らず割れてしまったと笑う銘苅善明さん=7日、浦添市伊祖の「とん珍亭」

1日限定5食の「ミルフィーユかつ定食」(1300円) 創業当時に出していたソースつぼは一つ残らず割れてしまったと笑う銘苅善明さん=7日、浦添市伊祖の「とん珍亭」

 メニューは、県産豚の薄切りロースを8層に重ねたミルフィーユかつや、エビ、カキ、ホタテを盛り合わせた海鮮フライなど、1日3食~5食の限定食が5種類。ほかに、定番のトンカツ定食、から揚げ定食、丼物、月見かつカレーなど計18種類がそろう。

 形や厚さを整えた肉に付けるのは、サクサク感が出る大きめの生パン粉。160度~180度の大豆油で揚げる間、銘苅さんは長い箸を鳴らしてリズムを取る。「なんでって、手が余ってるからかな?」。中まで火が通ったかどうかは、鍋の音を聴いているうちに分かるという。

 銘苅さんが初めて作った料理は、小学2年生の時のハンバーグ。自宅の冷蔵庫でひき肉を見つけ、親に内緒で炒めた。「ボロボロでまずくてまずくて、食べられたもんじゃなくてね」。庭に穴を掘って隠したが、犬が掘ってしまいバレたという。

 「だから、最初から料理が上手な人なんていないよ。でも、作るのは好きだったね」。宮崎県のレストランや奈良県の料亭で約3年間修業し、沖縄ではまだ珍しかったトンカツ専門店を開いた。トンカツだけでやっていけなかったら豚ステーキやテビチも出そうと考えていたが、すぐに常連客が付いた。学生だったお客さんは今、孫を連れてお店にやってくる。

 「昔よりちょっと薄くなってるよ、僕の頭」。相棒のハンチング帽を脱いで、銘苅さんは笑ってみせた。(浦添西原担当・平島夏実)