安倍政権が、基地政策の進捗(しんちょく)と沖縄振興とを関連づける「リンク論」にかじを切った。背後に見えるのは、名護市辺野古への新基地建設を認めない県へのいら立ちだ。同時に、2年後の知事選を見据え、翁長県政と県内経済界の「分断」を図ることで翁長雄志知事の求心力の低下を狙いたい「政局」に連動した思惑も見え隠れする。(政経部・大野亨恭、銘苅一哲)

沖縄県の翁長知事

 沖縄振興に携わる政府関係者の一人は、リンク論への転換には、沖縄の保守系議員や保守系首長の意向も働いたと明かす。

 政権はこれまでもリンク論に踏み込むタイミングをうかがっていた。だが、選挙を控え、有権者からの反発を恐れる自民県連が「最大の抵抗勢力」(関係者)で、二の足を踏んできたという。県議選を終え、当面選挙がない今が「最良のタイミング」との判断が働いた、と解説する。

 別の関係者によると、知事と政治的に対立する県内の保守系首長も以前からリンク論への転換は「やむなし」との考えを持っていたという。「予算減はわれわれにも痛みを伴うが、翁長県政を支持するということは、こういうことだと分かってもらうしかない」。ある首長は周囲にこう漏らした。

 保守系の議員、首長らの批判の先は「国からの財政移転は沖縄にだけ突出して配分されていない」との翁長知事の主張に向いている。

 2013年度の決算ベースで地方交付税と国庫支出金等の県民1人当たりの額で比較すると、沖縄は全国で6位、地方交付税だけで見ると17位で、知事の主張は正しい。だが、ある首長は「知事の主張は予算獲得に奔走している国の役人に失礼だ」と批判する。

 予算を“人質”にした沖縄への攻撃は、自民党本部にも広がる気配を見せる。党関係者は「有力議員が中心となり、沖縄振興調査会などの場で一括交付金にメスを入れるべきだとの声が出そうだ」と語る。

 一方、リンク論の広がりを最小限にとどめたい県は、10日の国庫要請を控えた7日午後に県関係の自民党国会議員でつくる「かけはしの会」との面談を急きょ設定した。

 だが、情報を受けた県連の県議団は猛烈に反発した。県連幹部は「なぜ自民県連をつぶそうとする知事をわざわざ県連事務所に招かないといけないのか」とかけはしに抗議。かけはしは「会談に踏み切れば、県連内部の分裂につながりかねない」として7日の日程を見送った。

 県連幹部の1人は「わざわざ知事と連携する必要はない。自民が知事と仲が良い、とアピールするメリットもない」と強硬的な姿勢を堅持する。

 ただ、国会議員の1人は真逆の考えを示す。「知事と会わないというのは、子どもじみた対応だ。政治的な権力争いと振興こそ、リンクさせるべきではない」と指摘し、付け加えた。「知事をいじめても自民の支持率が上がる訳ではない」

 予算に加え、高江のヘリパッド建設や辺野古の陸上部工事の再開など、県への圧力を強める政府の姿勢を県幹部は知事が裁判などで訴える主張に触れ、こう批判した。「民意を無視する上に権限をかざして沖縄を攻める。自国の政府にここまで虐げられる地域は、まさに沖縄だけだ」