アスリートは、調子のピークを本番に合わせるために調整を図る。言うは易しだが、これが一番難しい。練習通りに力を発揮できた試合なんて、競技人生の中でめったにないだろう

▼リオデジャネイロ五輪の競泳男子400メートル個人メドレーで、萩野公介選手は金メダルに輝いた。実力をそのままレースで出せたのはライバルの瀬戸大也選手の強さを認め、新泳法を磨いたからだ。「大也がいなかったら僕はここにいない」

▼持病の腰痛が最悪の状態で本番に臨んだ重量挙げ女子48キロ級の三宅宏実選手。2度失敗したスナッチの土壇場3本目、尻が付く寸前でこらえて立ち上がり、銅メダルにつなげた。「最後は無心。あれ、奇跡ですよ」

▼一方、フェンシングの優勝候補だった太田雄貴選手は、大声援を受けた地元選手に初戦敗退。体操の内村航平選手も得意の鉄棒で落下し、決勝を逃した

▼4年に一度の五輪で、実力を全て発揮するのは神業に近い。それゆえ、大舞台の重圧を乗り越えて戦う選手は称賛に値する

▼お家芸・柔道の銅メダリスト4人は一様に「悔しい」と肩を落とした。世界3位の称号に、もっと胸を張っていい。同じ「銅」の三宅選手は競技後、バーベルにほおずりし、いとおしそうになでた。「16年間ずっと一緒だったパートナー。ありがとう」。こんな笑顔を何度でも見たい。(磯野直)