強い日射に伴い、急激に発達する積乱雲から発生する雷。晴れの日が多かった7月の沖縄地方は、南からの湿った空気の影響で大気が不安定になり、昨年を超える数の注意報が出された。糸満市のビーチでは落雷が男性を直撃する事故も発生。8、9月も引き続き警戒が必要な雷の被害に、どう備えるかを考える。(社会部・知念豊)

■1億ボルト放電 一般家庭2カ月分

写真を拡大 雷が起きる仕組み

 7月の県内で雷注意報が発表された回数は、沖縄気象台が12回(昨年12回)、南大東島地方気象台が12回(同5回)、宮古島地方気象台が10回(同8回)、石垣島地方気象台が18回(同9回)だった。回数が昨年並みか増えており、十分な注意が必要だ。

 沖縄気象台によると、落雷の被害は2005~11年、全国で932件(県内26件)となっている。そのうち8月は282件(同6件)と集中している。

 全国的には8月の被害が約3割。原因の一つに、台風の接近が多いことも挙げられる。台風を取り巻く雲の中で積乱雲が発生し、その中で雷が起きるためだ。

 夏場、強い日射で暖められた地表近くの空気は水蒸気と一緒に上空へ運ばれて積雲になり、周りから水蒸気が入り込むとさらに発達し、積乱雲となる。積乱雲は高度14キロ近くまで達し、十数キロ程度まで広がる。

 高度5キロ以上の上空は気温0度以下になっており、そこで発達した雲の中では水蒸気が冷やされ、あられや雪に変わる。

 さらに上昇を続けるうちに、あられや雪がぶつかり合って起きた静電気が1億ボルトほど帯電。地表に放電すると、落雷になると考えられている。1億ボルトは約400キロワットで、一般家庭の消費電力2カ月分に相当する威力だ。

 強い日射で局地的に、急激に発達する積乱雲の中で発生する雷は多くが「熱雷」とも呼ばれ、夏場の雷の多くは熱雷とされる。

 7月の沖縄地方は太平洋高気圧に覆われて晴れる日が多かった。だが、南からの湿った空気の影響で大気が不安定になり、局地的に発達した積乱雲で熱雷が多く発生した。

<糸満落雷事故>心肺蘇生にAED有効 ビーチスタッフ迅速対応

写真を拡大 男性が落雷事故にあった美々ビーチいとまんの正面入り口付近=7月24日午後5時、糸満市西崎

 糸満市西崎町の「美々ビーチいとまん」で7月24日、40代の会社員男性に雷が当たり、一時心肺停止となった。

 すぐさまビーチのスタッフが自動体外式除細動器(AED)で男性を手当てし、駆け付けた救急隊員らの心肺蘇生措置で自発呼吸を取り戻した。AED普及に取り組む日本赤十字社県支部の上間昇事業推進課長は「止まった心臓を動かすことが最優先。その上でAEDは有効だ」と訴える。

 事故当時、男性の救助についた同ビーチのライフガード、大城織弥さん(27)はAEDの使い方や人工呼吸を学ぶ講習を受講し、「赤十字救急法救急員」の資格を持っていた。

 スタッフルームで「ドーン」という落雷の音を聞いた大城さんは「人が倒れている」と聞き付け、AEDを持って駆け付けた。男性2人が倒れており、うち1人は意識がなかった。

 二次被害を避けるため、2人を安全な管理事務所まで運び、意識のない男性にAEDを使用。胸元には皮膚が少しめくれる程度のやけどがあり、額には倒れた拍子にできた傷もあった。

 大城さんは男性のぬれた体をタオルで拭き、右胸と左腰の辺りにAEDのパッドを貼り付けた。

 音声指示に従って電気ショックのボタンを押し、その後は胸骨圧迫(心臓マッサージ)と人工呼吸をしながら救急隊が駆け付けるのを待ったという。

 上間課長は「AEDのパッドを貼る位置を間違えて貼り直すと、粘着力が弱まり電気ショックの効果が期待できない。音声指示に従うだけで難しい操作は必要としないので、落ち着いて使用して」と話す。

 その上で「救急隊員が到着するまではAEDを取り外さず、胸骨圧迫と人工呼吸を続けてほしい」と説明した。(社会部・山田優介)

■10分ごと情報更新「雷ナウキャスト」活用呼び掛け

 防災には日ごろから情報を集めることも大切だ。気象庁では「雷ナウキャスト」で雷発生の可能性や活動の激しさを1時間後まで予測しており、10分ごとに情報が更新されている。

 また、雷の激しさを活動度1~4で明示。2以上では落雷の危険が迫っており、直ちに身の安全を守る行動が必要としている。

 また、雷注意報や活動度1~4が発表されていない地域でも、雷雲が急発達して落雷が発生する危険性があり、天気の急変には注意が必要。

 沖縄気象台では「最新の情報を収集し、防災に役立ててほしい」と活用を呼び掛けている。

■黒い雲に要注意、すぐ建物へ避難 国吉真昌さん(沖縄気象台防災気象官)に聞く

 雷は雷雲の位置次第で、海面、平野、山岳などの場所は選ばず、高い物体に落ちる傾向がある。グラウンドやゴルフ場、屋外プール、堤防や砂浜、海上などの開けた場所や山頂などの高い所などでは人への落雷の危険性が高くなるので、できるだけ早く安全な空間に避難することが必要だ。

写真を拡大 雷被害に遭わないために

 海や川で遊泳中に雷雲を見かけたらすぐ陸に上がり、建物内に隠れること。またゴルフや釣りの場合は、クラブやさおを高く上げないよう注意してほしい。

 雷は金属類ではなく、高い物体に落ちやすい。100ボルトほどの電圧の電気は金属を伝わりやすいので、一般的に「電気を通す=金属」といったイメージがある。だが雷には1億ボルト以上の電圧があり、このレベルになると物質の素材が金属かどうかは関係なく、高い場所に落ちる。雷雲が近づいてきたら金属類のアクセサリーなどを外すよりも、いち早く建物の中に避難することが重要になる。

 避難には鉄筋コンクリートの建物や自動車(オープンカーは不可)、バスの内部が比較的安全といわれている。木造建築の内部も基本的に安全だが、全ての電気器具や天井、壁から1メートル以上離れればもっと安全性が高まるという。

 近くに建物や車がない場合は電柱や煙突、鉄塔などの高い建造物から4メートル以上離れ、さらに頂上から45度以上の角度で見上げる範囲に入り、身をかがめることが望ましい。

 高い木の近くは側激雷を受ける恐れがある。幹、枝、葉から2メートル以上離れることが必要だ。姿勢を低くし、持ち物は体より高く上げないようにする。雷がやみ、20分以上経過してから安全な空間へ移動する。

 雷が発生する黒い雲を見かけたら、どこに向かうかに注意し、近づいてくるならすぐに建物や車の中に退避する。光や音が聞こえたときは、危険が迫っていると捉えなければならない。また雷は真下だけでなく斜めに落ちることもあり、黒い雲には一層の注意が必要だ。(談)