近代日本帝国の侵略戦争と植民地支配の研究と調査を専攻し、琉球沖縄人の台湾体験を追ってきた評者は、著者がどのような視点と論点で、日本人の台湾植民地問題を位置づけ解明し今日的な課題として継承しようとしているのか、一種の緊張感をもって拝読した。

法政大学出版局・3240円/ほしな・ひろのぶ 1963年兵庫県生まれ。立命館大大学院修士課程修了。琉球大准教授を経て、2010年から一橋大大学院教授。編著に「日本統治期台湾文学集成5、6 台湾純文学(一)(二)」など

 著者は戦後日本における台湾研究にいち早く取り組み、絶えず問題意識を持って問いかけてきた研究者の一人である。長く琉球大学に職を求め、在沖の日本人として台湾沖縄関係をテーマにした文筆活動を続け、その成果は県内でもよく知られている。

 本書は4部立て構成だ。第1部「植民地台湾の『贋』日本人たち」は「『植民地は天国だった』のか-沖縄人の台湾体験」の章で始まる。文学作品を通して、台湾植民地下の琉球沖縄人が、時には日本人でもあり、台湾人(中国人)にもなる浮草のような無国籍者として振り回される植民地体験を明らかにする。この視点と論点は新鮮で、台湾沖縄関係史の解明を飛躍的に前進させるものである。

 2部以降は「描かれた『蕃地』と『蕃人』-好奇心と怖れと」「海を渡る台湾人」「美談と流言」と続く。全編を通して植民地下の日本人、琉球沖縄人、台湾人(中国人)の実像を庶民史、生活史の文脈で描き、絡み合う人間模様を微に入り細に入り、浮かび上がらせる手法で、植民地支配の実態を刻銘に描いている。

 このように多くの実態が明らかにされている中でも、第1部第2章の台北帝国大学医学部の金関丈夫教授らの体質人類学の台湾調査に、与那国、八重山、宮古を含めた意図は何だったのか、金関の琉球沖縄に対する植民家の「贋」部分の解明も今後の課題にしてほしいものである

 いずれにしても本書は、いまはやりの「台湾ブーム」に便乗して「台湾消費」を続ける「贋」日本人研究者・作家が多い中で、「正当」な先行研究の成果と緻密な現場調査を踏まえて誕生した。大きな成果である。(又吉盛清・沖縄大客員教授)