「配偶者控除」の見直しが、来年度税制改正の焦点として浮上している。
 所得税の配偶者控除は、専業主婦やパートで働く妻など年収が103万円以下の配偶者がいる場合、夫の税負担が軽くなる制度である。
 指摘されるのは、制度の恩恵を受けるため、あえて年収を抑えようとする働き方だ。「103万円の壁」が女性の就労拡大を阻んでいる。
 厚生労働省の「2011年パートタイム労働者総合実態調査」によると、パートで働く既婚女性の5人に1人が年収や労働時間など「就業調整をしている」。その割合は、男性や独身女性に比べて突出して高い。
 控除を意識した働き方が、結果的に働く意欲をそいではいないか。
 配偶者控除が導入されたのは高度経済成長期の1961年。サラリーマンの夫と専業主婦の妻に子どもという当時の標準的な家族をモデルに、夫を支え、無償の家事労働に従事する妻に配慮した制度だった。
 しかし90年代後半には、共働き世帯が専業主婦世帯を上回っている。近年はひとり親世帯が急増。生涯未婚率の上昇など、結婚しない人生を選択する人も少なくない。
 専業主婦を優遇する不公平な制度との批判は、「男性は仕事、女性は家庭」という古い価値観にも向けられている。
 多様化する働き方や生き方を見つめ、今という時代に合った中立的な税制を探る時である。
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 今月8日に開かれた政府の経済財政諮問会議で、民間議員から配偶者控除と配偶者手当の見直しを求める声が上がった。年内に道筋をつけるよう政府に対応を促すものだ。
 配偶者控除については、政府税制調査会で議論された経緯があるものの、結論は出ていない。
 政府が力を入れる「女性活躍」の視点に立てば、早急に取り組む必要がある。
 同時に見直しを求めている配偶者手当は、配偶者のいる社員や職員に一定の基準を設け支給するもので、こちらも女性の就労を阻む要因との指摘が強い。
 先ごろ人事院が国家公務員の配偶者手当の半減を勧告したのは、女性の働く意欲を失わせているとの批判を受けてのことである。
 人事院勧告は配偶者手当を減らす代わりに、子どもの手当を増額し、扶養手当の総額は維持するとする。
 民間でも社員の声に耳を傾け議論を始めてもらいたい。
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 女性の就労を阻む壁は、配偶者控除や配偶者手当のほかにもいくつもある。
 働きたい女性が働き続けるには、男性の育児・家事参加はもちろん、待機児童をなくすなど、仕事と子育てを両立させる環境整備が欠かせない。
 働く女性の6割近くを占める非正規雇用、男性の7割にとどまる賃金格差の問題も深刻だ。
 「103万円の壁」だけでなく、その周りを取り囲む「ガラスの壁」にも向き合う必要がある。