沖縄と壺屋焼に終生こだわり、多くの傑作を残した陶工金城次郎が逝って早や12年になる。

榕樹書林・1490円/まつい・たけし 1949年大阪市生まれ。2015年から東京大名誉教授、総合地球環境学研究所客員教授。「自然の文化人類学」「文化学の脱=構築-琉球弧からの視座」など著書多数。

 このたび、人類学専攻の松井健氏が新たに本書を発行した。京都大学で理学博士号を取得した著者は1972年から沖縄調査を始め、西南アジアでの遊牧民調査、東南アジアの工芸調査なども行い著書も多い。さらに柳宗悦と民藝(みんげい)についての著作もある。

 「はじめに」で金城次郎のヤチムンが美しいという当たり前のことを金城次郎その人とその作品に即して説明するために書いた、と明記する。民藝と柳宗悦の思想を詳しく解説、壺屋時代の金城次郎の仕事と作品はまさに民藝の美を具現していると説く。松井氏が指摘するように確かに次郎さんの作陶のピークは壺屋時代にあるとする見解に私も全く同感である。

 次郎さんと濱田庄司との深い絆について先行文献に目を通し、陶芸関係者からの聞き取りを交えながら記述する。私自身濱田さんと次郎さんの対話をそばで聞く機会が何度もあった。両人は民藝作家と壺屋焼陶工という立場の違いはあったが、師弟の深い情愛で結ばれていた。

 第3章作品を「見る」の「湯呑変幻」では、従来なかなか触れられなかった作品の底割れに言及。この件について人は非難こそすれ、容認することはほとんどなかった。しかし、松井氏は次郎さんのヤチムンは実用品であって決して芸術品ではないと温かいまなざしを向けて考察している。実は私事にわたるが、60年代次郎さんの工房に通い白セメントで修理された品物を買い求め愛用した一人である。

 72年登り窯による作陶にこだわった次郎さんは読谷村へ移った。現在、次郎さんの人と作品を追慕する陶芸家は多い。読谷村内の他に大宜味村などで登り窯による日常使いの器作りに励む後継者たちはヤチムンの伝統を追求しており、頼もしい限りだ。本書は金城次郎の人と作品、広く民藝運動との関係性など柳宗悦と民藝の研究者・松井氏の健筆がさえる1冊である。(宮城篤正・工芸研究家)