21日に始まった若者の主権者意識を育むイベント「夏の政治キャンプ」。2日目の22日、メインイベントは、沖縄タイムスのデスク陣へのプレゼンテーション。沖縄県議会への請願書提出を目標に、取り組んできた高校生、大学生たちの発表とデスク陣とのやり取りから何が見えてきたこととは。(デジタル部・與那覇里子)

沖縄タイムスのデスク陣

 午前11時。石川達也編集局長を筆頭に、与那嶺一枝、稲嶺幸弘の両編集局次長、約10人のデスクがプレゼン会場の席に着いた。参加メンバーは昨日、帰宅後もLINEでやりとりしながら、資料を集め、知識を頭にたたき込んだ。緊張感が張り詰める中、プレゼンが始まった。

■共通していたことは具体性のなさ
 「福祉」チームの発表。メンバーは琉球大学1年の河野慧さん、同大4年の菅原未来さん、社会人の平仲稚菜さんだ。

 「請願では路線バスの運行・ルート案内の充実、割引や特典を求めたい。高齢者にも見やすく、外国語などにも対応したアプリやホームページがほしい。バスは遅れるイメージがあるが、女性にとっては安全な側面もある。安全な交通機関としてのイメージアップをしてほしい」
 

発表する琉球大学4年の菅原未来さん
 


 儀間多美子社会部デスク「安全な交通機関という発想が面白い。女子生徒の通学配慮など想定されるが、具体的にどう考えているか。先進事例があるのか?」
 
 菅原さん「福岡ではタクシーで女性の方に身の危険を感じたら乗って下さいというケースがある。バスでも運転手側から声かけや妊婦への手伝いといった安心安全作りをアピールすれば、イメージアップにもつながると思う」

デスクからの指摘のメモ

 石川編集局長「案内充実に重点を置きたいと理解するが、具体的にどういうことをやれば案内が充実するのか、そこが欠けているのはないか。例えばバス停に案内が貼られているが、今は時刻表だけ。アプリもあるが、お年寄りも分かりやすいようにする必要がある。分かりやすい請願にまとめた方がいい」

 実際、福祉チームだけではなく、発表した全てのチームに「具体性」が欠けていた。例えば、「LGBT」のチーム。請願書に「性的少数者に配慮するように求める」と記載していたが、与那嶺次長から「具体的であればあるほど議論しやすい。性別記入欄を廃止するというように具体的に書いた方がいい」と指摘があった。
 

■請願を実現させるポイント
 「LGBT」チーム、沖縄国際大学4年の與儀芽萌里さん、琉球大学3年の比嘉麻乃さん、同大3年の平良亮太さんが発表した。
 「那覇市では、パートナーシップ登録制度が施行されている。LGBT理解への大きな一歩となったが、那覇市民にしか適用されない。那覇市以外で同性パートナーシップを望む県民も多くいるのが現状である。県全体でパートナーシップ条例を制定することを希望する」
 與儀さんが補足説明。「電通総研の調査で、LGBT層に該当する人は7.6%、LGBT層の商品・サービス市場規模は5.94兆円。マサチューセッツ州は同性婚の合法化で1億1100万ドルの利益があったという。県全体が制度を作ることによって人が集まってくるのではないか。沖縄が先立って、宿泊施設の問題を改善することでよくなっていくのではないか」

グループの発表を熱心に聞く参加者たち


 吉田央政経部デスク「米国や電通のデータがある。経済効果も分かるし、LGBTの人たちが結構いるんだと実感する。大事なことは、特別ではなく、より身近にLGBTの人たちがいるということ。請願書にデータを盛り込めれば、議員の理解を後押しすることになる」

 今回のキャンプでは、データや資料を調べて請願を練り上げていくチームと、熱い思いを請願にぶつけているチームの二つに分かれた。前者は、新聞を読み込み、調査データを洗い出し、実際にアンケートを取っているチームもあった。プレゼンでは資料を準備し、いかに相手に分かりやすく伝えて、共感してもらうか、社会を変えたいという思いが伝わってきた。一方で、後者はなかなか内容がまとまらず、何を変えたいのか、課題が絞り切れていなかった。データをまとめて客観性を作り上げる段階には至らず、煮え切らない発表になってしまった。

スライドを使って発表したLGBTチーム

 もう一つ、若者たちが1日目を終えて抱えていた思いがある。
  「請願をどう捉えたらいいのか」
 そんな不安に応えるように、稲嶺次長はこんな説明をした。
 
 「請願は、公益性が問われる。公益性が大きければ大きいほど、通る可能性がある。弱者を助けることでそれ以外の人にもプラスがあるという状況があれば、議会での議論の分かれ目になる。経済的な数値も大事だ。他のメンバーの請願にも共通するが、公益性と、この請願が実現したらプラスになるかをいかに説明できるかがポイントになる」

■社会を変えることは、自分の意見を押し通すことではない

プレゼンを終えた参加者たちは再びディスカッションを始めた。表情はさらに引き締まったように見えた。

河野慧さんは「記者のみなさんに、請願書の基盤が揺れていないかを確認してもらったように思う。請願書を書くことの難しさを感じている。抽象的な部分を分かりやすく書くための言葉の使い方、誰が読んでも同じように捉えてもらえる文章にしなければならない。スキルを身につけて、自信をつけたい」。

平良亮太さんは「社会を変えることは、自分の意見を押し通すことではないことを知った。客観性、データも必要。自分で考えたことを社会に還元する立場になると思うと、ドキドキする」と気を引き締めていた。

プレゼンが終わり、再度請願書を練り直す参加者たち

 稲嶺次長はこんなことも話していた。
「日ごろから新聞を読んで、問題意識をもたないといけない。そうでなければ、何をどう変えると、世の中がよくなるのかが分からない。厳しい指摘もあったと思うが、より良いものをつくるにはどうしたらいいか、素直に受け入れて改善、修正するのは大事なこと。今後の作業にうまく生かしてほしい。請願が実現すれば、今よりいい社会になる。是非、頑張ってもらいたい」

 さて、23日は最終日。現役の県議会議員とのディスカッション。どんな議論が繰り広げられるのか。続報のリポートに加え、Facebookページで生中継も実施する。