沖縄市から嘉手納町に伸びる県道74号。取材中、米軍嘉手納基地を左手に車を走らせていると、耳をつんざく爆音と灰色の物体が視界に飛び込んできた。手は汗ばみ、体は縮こまった

▼嘉手納基地に着陸する米軍機が頭上をすり抜けた瞬間だった。落ちる、と錯覚するほど近い。怖いという表現では足りない。そんな光景と爆音にさらされ続けている住民ならなおさらだろう

▼約2万2千人に上る基地周辺の住民が原告となる第3次嘉手納爆音訴訟が25日、結審する。米軍機の飛行差し止めを求めた1次提訴から34年。爆音はいまだにやまない

▼高血圧、耳が聞こえにくいなどの症状に悩まされる嘉手納町の60代の夫婦。原因が分からず不安だけが増す。爆音にまひする子どもたちを見た元保育士の女性は「園庭でのびのび遊ぶ姿を見たい」と願う。本紙連載中の「痛みの内実」で吐露している

▼これまで爆音の違法性は認められたが、飛行差し止めの訴えは退けられたまま。神奈川県の厚木基地の第4次騒音訴訟では自衛隊機の夜間飛行差し止めが認められた。住民にとっては米軍機も同じだ

▼「静かな夜を返せ」。願いがかなうことなく亡くなった原告も少なくない。人として当たり前の生活を求めることはそんなに難しいことか。ささやかな要求に、司法が当たり前の答えを出す番だろう。(赤嶺由紀子)