創業110年の英国の自動車メーカー、ロールス・ロイス社にまつわる有名な話がある。大富豪の男性が社名の高級車で砂漠横断に挑戦し、途中で故障した時の話だ

▼困った男性は無線で同社に修理を依頼。すると1時間後にスタッフが乗ったヘリが駆けつけ、素早く修理を済ませると、あっという間に去っていったという

▼都市伝説の一種であることを差し引いても、顧客に対する姿勢の落差にはあぜんとする。報道に尻をたたかれ、早期復旧に向けて重い腰を上げた沖縄都市モノレール社の昇降機停止をめぐるドタバタ劇のことである

▼「県民の足」を自認する同社に欠けているのは「顧客目線」である。高齢者や障がい者の不便さに想像力が働かない冷たい体質は、安全性まで軽視するのではとの不信の芽も生んだ

▼さらに今回は、観光立県の顔にまで泥を塗ってしまった。信頼回復に向けては、親方日の丸的な体質に自らメスを入れ、血の通った組織に再生して出直してもらうしかない

▼先の伝説には粋なオチがある。数カ月たっても修理代の請求書が届かないのを不思議に思った男性が、同社に電話で照会するとスタッフが答えた。「何かの間違いでは?当社の車は絶対に故障しませんので」。企業規模や伝統は関係ない。問われているのは「顧客第一」に徹する企業の矜持(きょうじ)である。(稲嶺幸弘)