米軍嘉手納基地周辺の住民2万2千人余が国に米軍機の深夜早朝の飛行差し止めや、損害賠償などを求めた第3次嘉手納爆音訴訟が25日、那覇地裁沖縄支部(藤倉徹也裁判長)で結審する。提訴から5年4カ月。悲願の差し止めに向け、住民側が最大の争点に位置付けた「騒音と健康被害の因果関係」を中心に訴訟は展開されてきた。経過をまとめた。(中部報道部・下地由実子)

騒音分布図

爆音を響かせ嘉手納基地に着陸する米軍機=18日午後、北谷町砂辺(長崎健一撮影)

委任状が入った段ボールを手に提訴に向かう第3次訴訟の原告団支部代表ら=2011年4月28日、那覇地裁沖縄支部

騒音分布図 爆音を響かせ嘉手納基地に着陸する米軍機=18日午後、北谷町砂辺(長崎健一撮影) 委任状が入った段ボールを手に提訴に向かう第3次訴訟の原告団支部代表ら=2011年4月28日、那覇地裁沖縄支部

【訴訟の経緯】34年にわたる住民と国の争い

 2011年4月に提起した3次訴訟の原告2万2千人余は、全国の米軍基地訴訟でも最大規模だ。1982年の1次提訴から34年にわたる住民と国の争い。騒音による心身への影響、墜落の危険との隣り合わせの暮らしが続く中、救済を求める住民は、1次約900人の24倍、2次約5500人の4倍にまで膨れ上がっている。

 住民側が飛行差し止めのポイントとして力を入れたのが、騒音と健康被害の因果関係だ。2次で騒音性難聴の個別立証をしたのに続き、3次訴訟では特に夜間騒音に着目。睡眠妨害や睡眠障害を通じ、心臓血管系疾患や精神機能への影響といった健康被害が生じているとの科学的な立証を重ねた。「騒音に起因し同基地周辺では毎年4人が死亡」との専門家証言もなされた。

 これまで、裁判所が差し止めを退けてきた根拠は、日本政府の主権の及ばない米軍の飛行に日本政府へ差し止めを命じることはできないという「第三者行為論」だ。3次では、本訴訟とは別に、第三者行為論を崩す試みとして、2010年施行の民事裁判権法を根拠とし、米国政府へ直接、米軍機の飛行差し止めを求めた「対米訴訟」も提起している。

【騒音分布と居住地】全員の賠償認定なるか

 原告2万2千人余は、嘉手納町、沖縄市、北谷町、うるま市、読谷村の5市町村、原告団6支部にまたがる。国の作成した騒音予測分布図(コンター)で、うるささ指数(W値)75以上の地域に全員が住んでいる。

 国の環境基準では飛行場周辺の住宅用地域はW値70以下。W値75以上は住宅防音工事の対象だ。第2次嘉手納や1次普天間、4次厚木など近年の訴訟では、W値75以上の地域に賠償を認める判断が踏襲されている。ただし、読谷村の座喜味以北は、W値75でも被害が少ないとして2次で請求が棄却された。今回、すべての原告の賠償請求を認めるかも焦点の一つとなる。

 一方、防衛省は嘉手納周辺のコンター見直しを10月末をめどに進めている。東京・横田基地など、見直し前に比べコンターが縮小したケースもあり、原告団や弁護団には、「結果次第では今後の控訴審に影響が出るかもしれない」との懸念が広がっている。