ヒグラシやスズムシの鳴き声が聞こえ始めたようだ。日中の暑さは残るが、夏のまばゆい輝きが日ごと薄らいでいくのを感じると、少し寂しい

▼わけても青春時代の夏は、好きなことに打ち込める楽しさでいっぱいなはずである。その時間が無残についえ、二度と経験できない最後の夏となってしまった。埼玉県の河川敷で16歳の少年が遺体で見つかった事件である

▼少年は河川敷で顔や右上半身の一部が地上に出て、ほかは土砂に埋まった状態で見つかった。目立った外傷はなく、死因は溺死という。発見場所は、台風9号の影響で冠水していたようだ

▼無職少年が殺人容疑で逮捕されている。裸で川を泳がせ、暴行しているような動画もあるという。逮捕された少年と同じグループのメンバーが現場に居合わせていたようで、警察は複数から暴行を受けたとみて調べを進めている

▼「うそをついたり、電話やメールを無視したので殺した」。逮捕された少年の供述の軽薄さに、たたきつけてやりたい言葉もあるが、今は腹にこらえ、何があったのか事件の解明を待つ

▼五輪の熱狂の傍らこの夏は、障がい者を狙った卑劣な殺人をはじめ、胸がふさがる事件が相次いだ。守ってやれなかったと悔い悲しみ、冥福を祈る姿を多く見た。ヒグラシの声も、よりもの悲しく聞こえる気がする。(宮城栄作)