沖縄に米軍基地が集中しており、それを巡り沖縄県と政府が対立している、というくらいのことは、おそらく多くの日本人が知っているだろう。しかし、そもそもなぜ集中しているのか、そしてなぜ、またどれほど沖縄が怒っているのか、を知っている人は、残念ながらさほど多くないようにも思える。

知る沖縄(朝日新聞出版・1404円)/きむら・つかさ 1977年山梨県生まれ。上智大卒。朝日新聞記者。長崎支局、岩国通信局、那覇総局などを経て現在、東京本社社会部

 たとえば、沖縄への基地集中は地理的に仕方がないとか、基地のもたらす経済効果は大きいため真剣に基地撤退を訴える人は多くない、というふうに本土の多くの人々は思っているのではないだろうか。ひょっとすると沖縄にもそう考える人がいるかもしれない。

 もちろんこれらは誤解である。いま沖縄には全国の米軍基地の74%が集中するが、1950年代の基地の割合は、実は本土9、沖縄1であった。それが、本土の独立回復から沖縄の本土復帰までの20年の間に、本土で高まる基地反対運動を受けて行き場を失った基地が沖縄へ移設され、最終的には70年代に現在のような割合になった。つまり、安全保障上の位置関係を理由として沖縄に基地が集中しているわけではないのである。

 また県民総所得に占める基地関連収入の割合は、本土復帰のころの15%から現在では5%程度に減っている。基地返還後の跡地利用による経済効果も高く見込まれるうえ、そもそも、それが「銃剣とブルドーザー」によって奪われた土地であれば、なおのこと真剣に返還を求めるのは当然である。

 以上の2点は、私が沖縄について本書に基づいて本土で語る際、多くの人が知らなかったと驚く代表例である。もちろん本書はこの他にも、あまりにも理不尽な沖縄の歴史と現状について、豊富な図表や写真を用い、丁寧にわかりやすく解説してくれる。

 沖縄の問題は、一つの地域だけを理不尽な状況において知らんぷりをする国であり続けてよいのか、というこの国のあり方の問題である。沖縄について、従ってこの国について考える人にとって、本書は最初の、そして必読の1冊である。(南野森・九州大教授)