2016年7月31日(日)

 この夏の参院選での大きな変化として、選挙権年齢が18歳以下へと引き下げられました。当該引き下げに対応し、文部科学省・総務省は高等学校等の生徒向けに副読本「私たちが拓く日本の未来-有権者として求められる力を身に付けるために-」を作成・公開し、当教材は多くの高等学校等の教育現場において活用されました。今回は、副教材の作成協力者の一人である、NPO法人YouthCreate代表の原田謙介さんに、18歳選挙に絡めて起こった社会の変化について、更にはより広く若者向けの政治に関連して、リディラバ代表の安部敏樹と対談してもらいました。(リディラバ メディア事業部)

安部:対談よろしくお願いします。今回は18歳選挙について、またそれに向けて進んでいった主権者教育について、更には教育と政治の関係等幅広いテーマで色々とディスカッションしたいと思います。

まずは、ストレートに、今回の18歳選挙についてはどういった変化として捉えてますか?

原田:ここ1年の(18歳選挙を取り巻く)変化は予想以上に大きかった、特に大きく変わったのは学校現場ですね。例えば文科省が調べているところだと学校でも選挙・政治に関する授業やってますかというと、かなりの学校が「はい」と答えています。文科省が各都道府県の教育委員会を経由してそういった教育をやれと言っていることも背景ですけど、まさかこんなに短期間で実際にそのような教育が(学校の中で)実施された点は予想以上でした。

安部:実際にどういった内容かはわからないけれど、ひとまずそういった政治に関する教育をやっている学校の数は増えた、と。

原田:増えました。やってる内容も多少は調査結果に載っていて、例えば模擬選挙やってますとか、(授業に)外部の選管呼んでますとか、いろいろありますけど、ここまで浸透するとは思っていなかったですね。

安部:内容面についてはどう見てますか?

原田:内容面は正直まだまだ十分なものとは思ってないです。とは言え、今までは基本的にはゼロだったことを考えると進歩かなと思います。(我々も)そういう教育受けてきたことないでしょ?

安部:全然無い。まあ私の場合そもそもあんまり学校通ってなかったからわかんないけど(笑)。

原田:ややこしいな(笑)。今までの教育では、国会議員の人数が何人かとかしか教えてきてないから、結局その後実際の選挙の時に何やればいいとか、普段から政治に関わるためにどういうことをやればいいとかは習ってないんですよね。それをやるようになっただけで大きな進歩かなと。

あと、政治との繋がりで言うと、教育委員会と学校現場の繋がりが強くなって、選挙管理委員会が学校現場にかなり入るようになったのも大きな変化ですね。

安部:それはポジティブな変化なんですか?

原田:とりあえずポジティブと捉えてます。最初のスタートとしては。
自分が書いた副読本はそもそも文科省と総務省が組んでやっているプロジェクトという点でも異例だと思います。2つの省庁が半分ずつ推薦者を出して委員会を組んで、数年も残るアウトプットを作るっていうのは結構な変化だし、(18歳選挙の)スタートの中でこういう形で教育と政治が近づいているのはポジティブな変化じゃないですかね。

(副読本「私たちが拓く日本の未来-有権者として求められる力を身に付けるために-」。参照元:文部科学省http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/shukensha/1362349.htm)

安部:その変化の理由ってなんですかね?もちろん、今回の参議院選挙からルールが変わったからそれに合わせてっていうのは大きいだろうけど、他の要因はあったりしますか。

原田:18歳選挙解禁になったタイミングで一気に拡げていかないと来年以降にじわじわ拡がることは考えられにくい。だから(国側としても)形だけでもこういったものをやるというのを、スピーディーにやり切る形で見せたかったんじゃないですかね。

例えば(2009年度に)裁判員制度が始まった時も法教育やりましょうという声はでましたけど、実際学校現場に法教育は全然出てきてないでしょ。もちろん、高校生がいきなり裁判員になることはないけど、今回の18歳選挙解禁だと実際に高校生が投票できちゃうわけだし、とりあえずやるからには学校も行政も一気に拡げたかったんだと思います。
学校の先生と話せばわかりますけど、やる気のある先生は取っ掛かりさえあればどんどん独自で進められる。だから主権者教育についても、最初にYouthCreateなり選挙管理委員会なりが教育現場に入っていって、こんな事例がありますとか主権者教育ってこういうものですよっていうのを発表していけば、やる気のある先生がどんどん現場で主権者教育を広げてくれるので、その点は特にポジティブな変化かなと思います。

安部:なるほど。今回の18歳への選挙権引き下げは、投票率やその結果うんぬんというより、主権者教育が浸透していったという意味では良かったということなのかもしれないですね。今までは有権者になるまで高校卒業から2年間猶予があるから、若者の政治的関心や投票率の低さについて学校側も責任逃れができたけど、18歳で投票できるようになれば、言い逃れもできないし、学校もやる気になりますよね。それは非常に大きい変化かもしれない。

原田謙介(はらだ・けんすけ) NPO法人YouthCreate代表理事/岡山大学講師/グリーンバード中野チーム代表 1986年岡山県生まれ、東京大学法学部卒。大学卒業後NPO法人YouthCreateを設立。文科省・総務省が昨秋全高校生に配布した「私たちが拓く日本の未来-有権者として求められる力を身に付けるために-」の執筆者。 (写真:豊田健、以下同)