ここ数年、エリーナ・ドゥニの音楽にハマっている。

民族楽器のようにピアノを奏でるコリン・ヴァロンとエリーナがアルバニア語で歌い上げる音楽。

言葉の意味は分からないけれど、日本人の僕も郷愁感を感じる。

ここにも、ルーツであり最先端の音楽がある。

エリーナがきっかけで、アルバニアという国について調べるようになった、日本ではなかなか書籍化されているものは少ない。

バルカン半島に位置するアルバニア、アドリア海を挟んでイタリアがあり、南にはギリシャがある。

文献によれば、紀元前2世紀にローマ帝国によって征服されて以降、歴史の中で様々な国に支配された運命を辿っている国。

近世に入ってからはヨーロッパ大陸にありながら、「鎖国」と呼ばれる政策を続けた。

「鎖国」と聞くと、暗いイメージを抱くが、純粋な独立を保つためのものだった。

1976年当時のアルバニア人民社会主義国時代の憲法を読むと、

独立を勝ち得るまでの長い歴史の中で、紡ぎ出された文章に、僕は純粋に感動した。

80年代にNHKのクルーが行った、アルバニアの取材の中に出てくる、

「戦争の出島にはならない、遠隔操作で最前線に立たされるほど私たちは間抜けではない」というアルバニア人の言葉が僕の心に突き刺さった。

当時、ソビエトが海軍をアルバニアに再び駐留させようとしていたことを、かたくなに拒否し続けていたアルバニア。

日本では「戦争の出島」とはどこになるのだろうか?

そして、今からの時代の戦争とはどんなものだろうかと想像する。

竹やりから刀、刀から銃、銃からミサイル、ミサイルから核爆弾。

ドローンで遠く離れた中東を別の大陸のオフィスから爆撃する時代

戦争とテクノロジーは一緒に発展してきた。

僕らは指ひとつで人類を滅亡させられる時代に生きている。

ポケモンを捕まえることも、人類を滅亡させることも同じような動作で出来る。

そんな時代に、

パワーバランスによる抑止力のための基地配備は何を生み出すのだろうか?

言葉を変えれば、パワーバランスのための基地配備がされた土地ではなにが起こるのだろうか?

直接的な戦争を回避するための、お互いの戦力の誇示、

中国船の接近、北朝鮮のミサイル発射のような、軍事的なパフォーマンスが「戦争の出島」の近くでは行われるだろう。

今の時代にエリーナのような音楽が歌われることは、とても大きな意味があるものになるだろうと思う。

多様性を受け入れた文化力こそが最大の抑止力であることを僕は夢見ている、

そして、夢見ることはジョン・レノンの時代に終わり、いま僕らは行動に移す時代に生きている。

子供の頃にアルバニアからスイスに亡命をしたエリーナ・ドゥニ、

「アルバニアとスイス、二つの世界が合わさる音楽。それが本当の私の故郷です」と語る。

初来日公演の初日は宜野座村のがらまんホール。

国籍、主義・思想、宗教、民族を超えて、音楽は人間が共有し、

お互いの苦しみや悲しみを濾過して、共生していくためにある。

3年目を迎える国際交流音楽祭でさらに、意味ある仕事に関われて、光栄に思う。

文・松永誠剛(宜野座国際音楽祭アーティスティックディレクター)

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9/2金曜日、今年二回目の宜野座国際交流音楽祭があります。

アルバニアが生んだ歌姫エリーナ・ドゥニ、ピアノに鬼才コリン・ヴァロンを迎えて待望の初来日公演!ここがらまんホールが初日となります。

東欧アルバニアの伝統音楽にジャズの即興音楽の要素を加えた彼女の音楽は、聴いたことがなくてもどこか懐かしく、私たちの心を遠い異国へと連れて行ってくれます。

民俗音楽特有のコードや多様なグルーヴ、リズムに乗せて、エリーナは愛と亡命の物語を唄います。素晴らしいメンバーと共に作り上げるステージは、民俗音楽の域には留まらず、新しいジャズとの融合の形を見せてくれることでしょう。

皆様よろしければどうぞご来場ください。

【詳細】

●国際交流音楽祭

エリーナ・ドゥニ・カルテット

【出演】

エリーナ・ドゥニ(ヴォイス)

コリン・ヴァロン(ピアノ)

パトリス・モレ(コントラバス)

ノルバート・ファンマッタ―(ドラムス)

【アーティスト動画】https://youtu.be/D4JFNvRWed8

【日時】9月2日(金) 19時30分開演(18時30分開場)

【場所】がらまんホール

【料金】

一般前売3,000円 当日3,500円

学生1500円

宜野座村民割引2,500円(宜野座村在住、在勤者のみ)

*全席自由

*未就学児入場不可

【ホールHPチケット予約】http://garaman.jp/sf/events/form.php?num=151

【主催】宜野座村文化のまちづくり事業実行委員会

【後援】ECM

【 アーティストHP 】http://www.elinaduni.com/

【アーティスト紹介】

エリーナ・ドゥニ(ヴォイス)

1981年アルバニア首都のティラナで生まれ、5歳の頃から歌手として国営のラジオやテレビに出演。

1992人に詩人でもある母親と共にスイスのジュネーヴに移住。音楽学校でピアノを学ぶ中でジャズに出会い、2004年にはピアニストのコリン・ヴァロンらと共に現在のカルテットを結成し、自身の故郷のアルバニアや隣国コソボの伝統音楽と現代ジャズを独自の形で融合させてきた。