固有の生態系を育む名護市辺野古の大浦湾へ、沖縄本島の外からダンプカー200万台超えの土砂を運び入れようとする日本政府に対し、国際社会が「待った」をかけた。沖縄の外来種対策を巡る国際自然保護連合(IUCN)の初の勧告を受け、沖縄の環境保全に関わる関係者らは「世界の良識」に期待を込めた。

「辺野古」を巡るIUCN勧告

 沖縄県環境影響評価審査会の宮城邦治会長は「勧告に強制力はないが、世界が注目しているという意味でインパクトがある」と歓迎。審査会は辺野古埋め立て承認前、政府の環境影響評価を巡って外来種混入対策の不十分さなどを指摘し、前知事に答申した。宮城会長は「日本政府は勧告をしっかり受け止め、対応や見解を示すべきだ」と訴えた。

 大浦湾の調査を続けるダイビングチーム・レインボーの牧志治代表も「やんばるの世界自然遺産登録を目指す傍ら、すぐそばの大浦湾では無法状態で工事を強行する日本政府の二重基準が改めて浮き彫りになった」と決議を喜ぶ。今後に向けて「市民レベルで勧告の重みを広く共有し、行動していかなければ」と気を引き締めた。

 「本土の私たちの行動がますます試される」。新基地建設に伴う西日本の埋め立て資材搬出地の市民団体でつくる「辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会」の阿部悦子共同代表も力を込める。各搬出地では、沖縄にいないアルゼンチンアリなどの特定外来生物の生息が続々と報告された。「土砂を出す側の各県でも、沖縄の県外土砂搬入規制条例のような制度を作れるかどうかが課題になる。沖縄に学びたい」と話した。

 一方、IUCNの総会に出席するメンバーは1日、沖縄を出発する。現地で稲嶺進名護市長らと共に、国際社会に沖縄の基地問題を訴えるジュゴン保護キャンペーンセンターの海勢頭豊代表は「沖縄の民意に強い後ろ盾ができた。世界の良識が沖縄の自然を守り、未来を守ることにつながる」と決意を込めた。 

■国際自然保護連合(IUCN)とは

 国際自然保護連合(IUCN)は1948年に設立された国家、政府機関、非政府機関で構成される世界最大の自然保護団体。本部はスイスのグラン。8月現在で170以上の国々から政府・政府機関222、NGO(非政府機関)1172が加盟する。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問を受けており、世界自然遺産の登録審査も担う。

 沖縄関連では2000年のアンマン、04年のバンコク会議で、ジュゴンやノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全を求める勧告、08年のバルセロナ会議でもジュゴンの保護推進を求めてそれぞれ決議。日米両政府にジュゴン保護をはじめ、沖縄本島北部の自然環境保全を求める勧告を出した。両政府は投票に持ち込まれた04、08年の勧告・決議とも棄権にまわり、投票態度を明らかにしなかった。日本国内では外務・環境省のほか、NGO16団体が加盟している。

■国際署名展開へ 環境団体

 米ハワイ州で1日に始まるIUCN総会で、ジュゴン保護キャンペーンセンター(海勢頭豊代表)は、決議された勧告の履行を日米両政府に求める国際署名活動を展開し、各国のIUCN会員に名護市辺野古沿岸部の埋め立て阻止運動への協力を求める。集めた署名は11月に日本政府に提出する考えだ。

 県外の埋め立て土砂搬出地で確認されている特定外来生物アルゼンチンアリがもし沖縄に侵入すれば、パイナップルやサトウキビなど沖縄の農作物に影響が大きいとされる。

 同センターは31日、決議を受けて声明を発表し「これまで日本政府は『IUCNは科学者の意見』『拘束されない』などと国際世論に背を向ける国会答弁をしてきた。今度こそ沖縄の生態系保全を求める4度目の勧告決議を真摯(しんし)に受け止めるべきだ」と強調した。