さまざまな出自をもつ24人の女性たちが、「家族写真」を手がかりに祖母や母の時代、自身、娘の時代へとつながる歴史を綴(つづ)ったのが本書である。在日朝鮮人、被差別部落、アイヌ、沖縄、フィリピン、スリランカ、ベトナム出身という、日本社会に生きる民族的マイノリティーの女性たちによる、いわば日本近現代女性史の裏面史だ。

「家族写真をめぐる私たちの歴史」御茶の水書房・2376円/編集した「ミリネ」は1991年に発足した在日の女性らがつくる団体。朝鮮語で「銀河」を意味し、行動することで銀河のように輝きたいという思いでつけた。本書の執筆者は1945~91年生まれの国内に住む女性24人

 父親が移住を機に結婚したフィリピン人女性を母に持つ新垣安子さんは、父親を中心に、18歳年下の母、きょうだい5人の写真を掲載。戦後の沖縄引き揚げに同行し、異国の地で生活する母親の心の機微に触れ、アジアへの関心に連ねる。

 大城尚子さんは、「戦争」を語らない祖父と、伊江島で戦争を体験した祖母の生き方を通して自らのルーツをさぐり、アイデンティティーを確立するプロセスを紹介。余命わずかの祖父の手を握る祖母の手がアップされた写真が老夫婦の苦難の歴史を感じさせる。

 ウチナーンチュの父と福島・青森をルーツとする母をもち「沖縄二世」として生きた仲間恵子さんは、乳児の頃の自身を抱き上げる父と、笑みを浮かべ寄り添う母の写真を掲げる。しかしその後の両親は不仲、自身の沖縄的名字に悩みながらも、複合アイデンティティーからウチナーンチュを選択する。

 玉城福子さんは、今は亡き姉の入った家族写真を紹介。父の仕事の都合で大分県で幼い日を過ごし、小学校から沖縄に移ったものの、「ナイチャー」といじめられないよう気を遣うほど、文化の違いがストレスになったという。そんな彼女も、県外へ出ることで構造的な沖縄差別を認識し、さらにさまざまなマイノリティーとの出会いによって活動を広めていく。

 本書には「違い」ゆえに差別されながらも、むしろそれをバネに前向きに生きる女性たちの声がびっしり詰まっている。用語にはていねいな注釈が付されている上、巻末の個人史を対応させた年表が、さらに本文を補完する役割を担っている。同時代を生きる「私たち」から次世代へのメッセージとなる、貴重な「証言集」といえよう。(宮城晴美・沖縄女性史家)