住んでいる地域や、そこにある文化を深く知ろうとすることを「足元を見つめる」と表現するが、本書はまぎれもなくそんな1冊。まさに足元にあるマンホールの図鑑だからだ。

「沖縄のデザインマンホール図鑑」ボーダーインク・1728円

 デザインマンホールは、それぞれの土地ごとに特色ある図柄が使われている。発祥は那覇市の「お魚マンホール」で1977年、古くなった蓋(ふた)を補修する際に図柄の改良を言いつかった市役所職員が、居酒屋でガーラを食べていたときにひらめいたという。復帰前のものが沖縄市に残っていたり、すでに使われなくなった蓋が、なぜか「越境」して別の場所で現役を張っていたりする。市井のアート作品としてとらえたとき、マンホールの「息の長さ」はもっと注目されていい。

 ちなみにデザインマンホールを管轄する沖縄県下水道課はPRに余念がなく、マンホール各種をあしらった下水道ポロシャツ、略して「ゲスポロ」なるものも販売している(私も買いました)。全国的にも「マンホーラー」と呼ばれるマニアが存在し、各県ごとの「マンホールカード」も作られていて、ちょっとしたマンホールブームだ。

 著者の仲宗根さんは、5年をかけて離島を含めたすべての市町村を回り、出会ったマンホールを写真に収めた。普通のマニアとは一線を画すのが、そこに描かれた地域文化について詳細に調べあげ、市町村章にまで詳しい解説をつけたところにある。マンホールには、地域の人たちがえりすぐった、最もアピールしたいものが描かれている。勇壮な綱引きや闘牛、織物や花々、歴史を感じるグスク-。路上のカンバスに描かれたのは、時代を超えるにふさわしい「わがシマの誇り」である。

 楽しい装丁をほどこされて生まれた本書は、サブカル本としてだけではなく、学校や図書館、子供たちのあいだでも話題だと聞いている。足元から、わがシマを見つめたい。そんな人々の熱意が形になった、幸せな1冊だ。(喜納えりか・ボーダーインク編集者)