経済的困難を抱える若者の学びを後押しする奨学金の趣旨に立ち返れば、疑問の残る対応だ。

 生活保護世帯の子どもが借りた貸与型奨学金を、那覇市が「収入」とみなし、母親に保護費の返還を求めている。

 家族は母親と娘2人で、2003年から15年まで生活保護を受けていた。その間に娘たちが受け取った奨学金を市は収入と判断。過払いになったとする保護費の一部93万1千円を返還すべきとしている。

 生活保護の生業扶助に「高等学校等就学費」があり、授業料、教材費、交通費、学習支援費などが認められている。

 しかし就学費は公立高校に通うための必要最低限の支給という形をとっていて、修学旅行費などは含まれない。塾代などをカバーすることもできない。

 2人の娘は、奨学金を教科書購入や資格取得、部活動、大学受験費などに充てたという。

 市は昨年も同様に返還を求めたが、手続きに瑕疵(かし)があるとする県の裁決で、処分は取り消された。

 その際、市に対し、母親と娘たちが就学経費を要する事情がないか調査する必要があったことを指摘している。

 なぜ奨学金が必要だったのか、必要な情報は届いていたのか。

 市側が親子の置かれた状況を把握し、積極的に相談に乗っていれば、就学費での対応や別の手段の提示もできたはずである。

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 同様の問題で、国が「奨学金は収入ではない」と示したケースがある。

 給付型奨学金を収入とされ、保護費を減額された福島市の親子が、市の対応を不服とした審査請求だ。昨年8月、国は市の判断を不適切とし、保護費の減額処分を取り消した。

 生活保護制度は、受給世帯に収入があれば、その分の保護費が減額される仕組みで、高校生の奨学金やアルバイト代も用途によっては収入と認定される。

 ただし最近は奨学金から学習塾に通う費用、大学の受験料などを捻出しても、保護費を減額しない流れにある。経済的に苦しい家庭の子どもが進学で不利にならないよう、制度の見直しが進む。

 那覇のケースで、仮に保護費を返還することになれば、奨学金の返済と合わせ「二重の借金」を背負うことになり、厳しい家計を直撃する。

 貧困の連鎖を助長しかねない。

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 県内の生活保護世帯の子どもの高校進学率は83・5%、大学等進学率は30・8%。全国最下位の県全体の高校、大学等進学率より、さらに約10ポイント低い。 

 生活保護法が、保護を受けながらの大学や専門学校への進学を認めていないことも関係しているのだろう。進学する場合は、親と子が生計を分ける「世帯分離」という方法をとらなければならない。 

 大学進学が将来の収入に影響し、貧困解消につながることを考えれば、世帯分離の問題にもメスを入れるべきだ。