米アップル社の創業者スティーブ・ジョブズ(故人)は、経営方針をめぐる対立で30代の時に追放されたことがある。約10年後に奇跡の復帰を果たすが、当時を振り返りこんな言葉を残している

▼「生涯で最高の出来事はアップルをクビになったことだ」。挫折を機に視野を広げ、経営のノウハウを磨き、アイフォーンなどのヒット商品の誕生につなげたのだろう

▼通算276勝の大投手、西鉄(現西武)の故稲尾和久さんも挫折を人生の糧にした人である。入団から8年で234勝と驚異的な勝ち星を挙げるが、引退までの残り6年は故障に苦しみ42勝に終わった

▼日本シリーズ3連敗後の4連投による逆転日本一を果たし、神様仏様と称された「鉄腕」は、「最後の42勝が挫折前の234勝に匹敵する宝物になっている」と自著に記している

▼人にとって挫折とは何だろう。書家の相田みつをさんに「肥料」と題した作品がある。〈あのときのあの苦しみも/あのときのあの悲しみも/みんな肥料になったんだなあ/じぶんが自分になるための〉

▼夢を追って、もがき、悩んでいる方もいるだろう。失敗の連続で心が折れそうになる時だってある。でも大丈夫。その苦しみも悲しみも、あなたの「肥料」となり、不世出の天才や鉄腕のように若き日の挫折に感謝する日がきっと来る。(稲嶺幸弘)