約10年前、名古屋で導入されたタクシーでの全面禁煙の方針に異議を唱える中日新聞のコラムが話題になったことがある

▼喫煙者を「スー(吸う)族」、非喫煙者を「スワン(吸わん)族」に例え、一方的な禁煙方針は少数派への「弾圧」ではないのかと。切実な訴えもむなしく、「スー族」の筆者の元には読者からの抗議が殺到した

▼「スー族」の憂鬱(ゆううつ)は今も続いている。先日あった同僚とのビーチパーティーでも、職場や家庭で肩身が狭いという嘆きの声が漏れた。隠れ「スー族」の一人が、妻にばれぬよう喫煙後は臭いを消すため念入りに手洗いしているなど、涙ぐましい話も耳にした

▼「スー族」受難の歴史は古い。大のたばこ嫌いだった徳川幕府の2代将軍・秀忠は、「禁煙令」を出した。喫煙者に加え、栽培農家、売買した者まで処罰する徹底ぶりだったという

▼時代が変わると、今度は大幅値上げで締め上げられる。お上の過酷な「お達し」の時代をくぐり抜けてきた「スー族」は、重税でも撲滅することはできなかったようである

▼同僚らは、4月に全国発表された煙を出さない「新型たばこ」の普及に「スー族」の生き残りをかける。数々の荒波を乗り越え、ともに励まし合う健気(けなげ)な姿に、「スワン族」の身ながら、「スー族の未来に幸あれ」と思わずつぶやきそうになった。(稲嶺幸弘)