法廷に現れた多見谷寿郎裁判長は、さてと、という感じで判決の主文を読み始めた。マイクのせいか、口調のせいなのか、聞き取りにくい。しかし「敗訴」という言葉だけはよく分かった。「詳しいことは後でじっくり精査するでしょうから」と、県側の弁護団に向かって、改めて付け加えた内容が実に興味深かった。例の「判決が出たらそれに従いますね」と念押しした件である。

新城和博さん

辺野古違法確認訴訟。判決後の集会で登壇者のあいさつに拍手を送る参加者

新城和博さん 辺野古違法確認訴訟。判決後の集会で登壇者のあいさつに拍手を送る参加者

 ざっくりいうと、判決が出ても、それに従わないのなら裁判の意味がない、そうなったら裁判所のダメージが大きく、面目が立たないのだが、前回、翁長雄志知事が裁判の結果には従うと言ったので、リスクを回避することができた。多見谷裁判長は、その事に対して県側の弁護団にお礼を言ったのである。「ありがとうございました」。これはよく聞き取れた。要するに言い訳であり、嫌味(いやみ)にも取れる。薄笑いしているように見えたのは、僕が偏向しているせいかしら。

 その間約4分。あっという間に3人の裁判官は消え去り、双方の弁護団、傍聴していたマスコミも法廷を後にした。

 20年前傍聴した、大田昌秀県知事時代の沖縄県と国が争った裁判の判決も、結果は同じく「国のやりたい司法だい」なのだが、それでも、とりあえず裁判長は30分ほど判決理由について読み上げていたのだ。

 結果については予想されていたこともあって、がっかりなんかしない。するもんか。しかしあぜんとする余韻もないまま、僕は、一番最後に法廷を出た。

 裁判所通りは、さっきまでほとんど報道陣しかいなかったのに、裁判結果を待って始まる集会の人たちでいっぱいだった。暑いのは日差しのせいだけじゃない。しかし、こうした光景は、もうデジャブですらない。いつも通りの沖縄である。

 集会のスピーチで弁護団の方が、「まだ判決文を精査しているわけではないが、こうなってほしくないと思っていた最悪の判決内容」というような事を言っていた。そうか、予想以上に政府寄りの判決なのか。もはや憤りというよりも、恐怖を感じてしまう。

 司法が、国民より政府に従うというのは、大げさに言えば、ファシズムではないのか。

 シールズ琉球の玉城愛さんがリードするガンバロー三唱で集会が終わるのを見計らったように、雨が降り出してきた。太陽雨だ。熱くなった身体と心を少しだけ冷やしてくれる。この雨は台風の影響で、やがて激しくなるだろう。しかし僕たちは、それに耐えてきた歴史と生活を持っている。どんな結果がでようともぶれないでいること。何度目かのつぶやきであるが、あらためて口にしながら裁判所通りを後にした。(新城和博・ボーダーインク編集者)