第1 事案の概要

米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡る訴訟で、判決が言い渡された福岡高裁那覇支部の法廷=16日午後(代表撮影)

 国(沖縄防衛局)が、普天間飛行場代替施設(本件新施設等)を辺野古沿岸域に建設するため、2013年12月27日、被告(沖縄県知事翁長雄志)の前任者である沖縄県知事から公有水面埋め立ての承認(本件承認処分)を受けていたが、翁長知事が、15年10月13日、承認処分の取り消し(本件取消処分)をした。

 国は、本件取消処分は、公有水面埋立法(以下、「法」という)に反して違法として、地方自治法245条の7第1項に基づき、本件取消処分の取り消しを求める是正の指示(本件指示)をしたが、知事が、本件指示に基づいて本件取消処分を取り消さない上、法定の期間内に是正の指示の取消訴訟(同法251条の5)をも提起しないことから、同法251条の7に基づき、知事に対し、同不作為の違法の確認を求めた。

第2 当裁判所の判断

1 取消権の発生要件(審理対象)およびその判断方法について

 行政処分に対し、原処分庁が職権で行ういわゆる自庁取り消しが認められる根拠は、法律による行政の原理ないし法治主義に求められる。

 その要件は原処分が違法であることだ。原処分に要件裁量権が認められる場合には、原処分の裁量権の行使が逸脱・乱用にわたり違法であると認められることを要する。従って、この点が本件の審理対象である。

 知事は、「本件取消処分において行った本件承認処分に違法があるとの判断に、要件裁量権がある」と主張する。

 そうだとすると、「裁量がないとして判断しても、法的・客観的に適法である原処分に対する知事の再審査の判断が、裁量の範囲内においてだがこれを誤って違法と判断したものだとしても、有効に取り消せる」という不条理を招くことになるなど採用できない。

 また、知事は、地方自治権・自治体裁量権を根拠に司法審査が制限される旨主張する。

 地方分権推進法ならびに地方自治法1999年および2012年改正は、国と地方の利害が対立し法解釈に関する意見が異なる場合に、それぞれが独立の機関として対立が続けば、行政が服すべき法的適合性原則に反する状態が解消できず、国地方の関係が不安定化、ひいては地方分権の流れが逆流し、国の権限を強化すべきであるとの動きが起こることを懸念して、その解決方法を設けた。

 そこでも透明で割り切れたシステムにするという観点から、国の関与の手続きを明確に規定した。その手続きの中で解決がつかない場合は、第三者であり中立的で公平な判断が期待でき、かつ透明で安定した手続きを有する裁判所に判断させることとしたものである。

 したがって、裁判所としては、是正の要求や指示がされ地方公共団体がそれに従わないことから地方自治法所定の訴えが提起された場合は、所定の手続きに沿って速やかに中立的で公平な審理・判断をすべき責務を負わされており、それを全うすることこそが地方自治法改正の趣旨にかなうゆえんである。

 また、不作為の違法確認訴訟は、その制度検討過程において、地方公共団体が不作為の違法を確認する判決を受けてもそれに従わないのではないか、そうなれば制度が無意味になるだけでなく、裁判所の権威まで失墜させることになり、ひいては日本の国全体に大きなダメージを与えてしまうとの懸念が表明されるほどマイルドな訴訟形態であることなどからしても、知事の主張は理由がない。