ダルトン・トランボの名前は最近自伝映画が公開されたことで耳にする機会が増えたかと思うが、本書では、「ハリウッド・テン」としてブラックリストに載せられたトランボの生涯とその後が簡潔にまとめられている。

七つ森書館・1728円/JENNIFER・WARNER 筆名。生年不詳▽あずさわ・のぼる 1946年生まれ。2007年から那覇市在住。訳著に「八月十五夜の茶屋」など

 訳者があとがきで指摘しているように、筆者ワーナーは、第1章「青年期」と第2章「若き日の経験」でトランボが脚本家になる前の労働者としての経験を紹介し、その時に得た教訓がのちの脚本家・作家としての人生や作品に及ぼした影響を強調している。

 第3章「共産主義とブラックリスト」で共産党に入党した経緯や下院非米活動委員会公聴会の様子、第4章「ブラックリスト時代の生活」で獄中生活やその後の執筆活動について、第5章「後半生」ではブラックリスト崩壊後の仕事について記されている。最終章「死、遺されたもの」で生誕100周年のイベントについても触れられており興味深い。

 本書は随所に注釈がついており、アメリカ史や映画史に詳しくなくとも用語をすぐに確認できる点で読者にやさしく、翻訳文も読みやすい。また、この訳書の特徴として、参考文献などが充実していることが挙げられる。

 1905年生まれのトランボの生涯は激動の20世紀やハリウッドの全盛期をなぞるようなものでもあり、赤狩り以外の面でも歴史のコンテクストを考えながら読むと面白い。訳者がそれを小年表にまとめているのが参考になる(対照表のようにするとより分かりやすかったかもしれないが)。その他、本書に登場するトランボ作品の一覧や、トランボ関連映画・書籍の紹介もあり、さらにこのテーマについて深めたい読者には参考になるだろう。

 本訳書はトランボの生涯について一気に読めると同時に、レファレンス(参照)として長く手元に置いて楽しめるものとなっている。言論の自由が制限され自己規制が起こるとどうなるか。いま日本でこそ読まれるべき1冊だろう。(名嘉山リサ・沖縄高専准教授)