集団予防接種の注射器の使い回しでB型肝炎に感染し、B型肝炎訴訟で国との和解が成立した男性患者(62)=沖縄市=に対し、沖縄市と県が、過去に支給した生活保護費約116万円について、保護開始前の和解日にさかのぼって返還請求したのは「誤り」として、厚生労働省が取り消しを決定したことが24日、分かった。(中部報道部・比嘉太一)

B型肝炎訴訟や患者について行政はきちんと理解してほしいと訴える男性

 B型肝炎訴訟の基本合意から5年。患者が高齢化し病態悪化が懸念される中、今回の取り消し決定は、今後の患者の生活保障につながるとも言える。同訴訟弁護団によると、行政が同訴訟の和解日を「資力発生日」とみなし、さかのぼって生活保護費を請求したケースは全国で初めてとみられる。

 男性は同訴訟で13年8月、症状が出ない無症候性キャリアの認定を受け、50万円の和解金を受け取った。その後、生活が困窮し生活保護を申請。14年7月から約半年間、生活保護を受けたが、受給期間中に病状が悪化。「慢性肝炎」と診断され、14年12月、国から追加給付金(和解金を差し引いた1250万円)の決定を受け、その後は生保が打ち切られた。

 しかし沖縄市は男性の資力の発生日を慢性肝炎と診断される以前の、訴訟和解日「13年8月」と判断。受給していた生活保護費全額116万1280円の返還を請求した。

 男性は市の判断を不服として15年5月、県に審査請求したが「市の返還処分は妥当」と棄却され、厚労省に再審査請求していた。

 男性の代理人は、県や市がそ及して返還を求めたことに対して「市の判断は国と原告団が結んだ『基本合意書』の性格を全く理解しておらず、不当な判断だ」と反論していた。

 同省は16年9月23日付の裁決書で「資力の発生日を保護開始前の和解日としたことは誤り」と指摘し、市や県の決定を取り消した。