就任後、稲田朋美防衛相が初めて沖縄を訪問し、翁長雄志知事と会談した。知事は、戦後沖縄が抱え続ける重い基地負担と苦難の歴史を説明、沖縄が名護市辺野古の新基地建設に反対する「背景」を説いた。だが、稲田防衛相側はあくまでも現行計画への理解を求めることに終始。認識はかみ合わず、議論は平行線をたどった。(政経部・大野亨恭)

稲田朋美防衛相(左)と会談する翁長雄志知事(左から2人目)ら=24日午後、県庁

 「それが上から目線なんだ」。非公開の会談の中で、知事がこう不快感を示した場面があった。

 東村高江周辺の米軍北部訓練場内へのヘリパッド建設で、資機材の搬入に自衛隊ヘリを使用したことへ防衛省の幹部が理解を求めたときだった。

 住民らの抗議行動で工事が進まない状況ではヘリ使用はやむを得なかった-。稲田氏に代わり説明した防衛省幹部の発言に知事は反論した。「沖縄の長い歴史を踏まえないといけない」

 県幹部は、知事の発言を「71年前の戦争体験に起因する自衛隊への県民感情を推し量るべきだとの思いだ」と解説する。

 知事は会談で、戦後、住民は銃剣とブルドーザーで強制的に土地を接収されたこと、27年間米軍の統治下に置かれ続けたこと、沖縄が日本から切り離された「屈辱の日」に、安倍政権が日本の主権回復記念式典を開いたことなどを説明したという。

 それは、協議に入る上で「歴史を知っているのと知らないのとでは全然違う」という知事の思いがある。これまで安倍晋三首相や閣僚との会談で沖縄の歴史を訴えてきたのも、その思いがあるからだ。

 だが、この日の会談でも沖縄の歴史に理解は示さなかった。幹部の一人は、「そこが伝わらないことに一番歯がゆさを感じている」と知事の心中を代弁した。

 稲田氏は会談で、従来国側が使う「辺野古唯一」との文言は使わず、普天間飛行場の危険性除去には「辺野古しかない」と述べたという。意味合いとしては同じだが、県内部には「沖縄へ配慮し、強い言葉を回避したのでは」との見方もある。

 知事は会談後、稲田氏の印象を聞かれ「心の内は分からない」と前置きした上で、「耳を傾けていただいた」と述べた。

 出席者によると、稲田氏は信頼関係の大切さを繰り返し口にし、安倍首相や閣僚に対し、どんな思いが伝わっていないのか知事に質問したという。幹部の一人は、稲田氏は「これまでの要人に比べ、聞く姿勢が感じられた」と評した。

 ただ、稲田氏は東村がヘリパッド完成後に代償として高江区への直接交付金を求めたことに前向きな姿勢を示した。政府方針に従えば、予算を積み増すという「アメとムチ」ともいえる従来の政府の懐柔策をかざすことも忘れなかった。

 政府が繰り返し強調する普天間の危険性除去や基地負担の軽減。県幹部は、沖縄の歴史や心情を理解しないまま政府が進める沖縄政策を切り捨てた。

 「沖縄にとって、痛みでしかない」