B型肝炎訴訟で給付金を受け取った沖縄市の男性(62)に対し、過去にさかのぼって生活保護費の返還を求めた市と県の判断を、国が「誤り」として取り消した。

 返還要求は病気の特徴や国の責任が追及された裁判和解の理解を欠くもので、取り消しは極めて常識的な決定だ。

 男性は、幼いころに受けた集団予防接種の注射器使い回しが原因でB型肝炎ウイルスに感染した。

 県内の訴訟団に加わり、2013年に和解が成立。ウイルスには感染しているが症状が現れていない無症候性キャリアとして50万円の給付金を受け取った。

 その後、病状が悪化し慢性肝炎となり、14年に追加給付金1250万円を受け取っている。

 男性が生活保護を受給したのは、追加給付金を受けるまでの半年間だ。

 沖縄市は、この半年分の生活保護費の返還を求める処分を決定。男性は県に処分取り消しを求め審査請求したが棄却され、厚生労働省に再審査請求していた。

 生活保護法63条は、資力があるにもかかわらず保護を受けた時は、保護費を返還しなければならないと定めている。

 B型肝炎訴訟では、病態区分に応じて50万~3600万円を国が支払うことになっているが、病気の進行は事前に予測できるものではない。

 この場合、資力が発生したのは追加給付金を受けた時とみるのが自然である。市や県が、キャリアだった時点の和解日にさかのぼり資力があったとするのは乱暴な解釈だ。

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 男性は同じ立場に置かれた人が、不利益を被らないよう声を上げたと言う。

 倦怠(けんたい)感など慢性肝炎の症状を抱えながら、役所を相手に処分の取り消しを求めて審査請求した心労はいかばかりか。

 生活保護を巡って、「保護たたき」ともいわれる現象が如実になったのは、人気お笑いタレントの母親が生活保護を受給していたと批判され騒動になった4年ほど前からである。

 2年前に改正施行された生活保護法は、受給者を減らすことを一つの目的に、不正受給対策を強化し、申請手続きを厳格化するものだった。

 今回、市が生活保護制度における資力の発生日を和解日とし、保護費の払いすぎを理由に返還を機械的に求めたのは、制度への厳しい目線と無関係ではない。

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 男性は現在、給付金を切り崩しながら、アルバイトで生活をつないでいる。

 しかし給付金で生活できる期間は限られている。高齢や病気の進行で働くことが難しくなった場合、再び保護が必要となるかもしれない。 

 むしろ生活保護の問題は、その「入りにくさ」にある。 那覇市で保護世帯の子どもが借りた貸与型奨学金が「収入」とみなされ、保護費の返還を求める事案があったばかりだ。

 一つ一つ事例ごとに保護を必要とする人たちの立場を理解し、積極的に援助していく姿勢こそ大切である。