「情報銀行」という言葉の響きにぎょっとさせられる。預けるのはお金ではなく体調のデータ、位置情報、資産状況、ネット通販の履歴など高度なプライバシー情報。銀行はそれを企業に販売し、私たちは利子としてポイント還元を受ける仕組みだという

▼ドラッグストアが周辺でお疲れの人を見つけ「栄養ドリンクはいかが」とメールする。株で大損したばかりの人に「先物取引で一発逆転」を持ち掛ける-。企業には夢のようなピンポイントの営業が実現する

▼政府は2年後の運用開始を目指して議論を始めた。どの情報をどこに預けるかは私たち自身がコントロールできることになっている。だが生活や好みが丸裸にされる不気味さ、漏えいの不安は拭えない▼Tポイントなどのポイントサービスは、すでに似たような役割をしている。誰がいつどこで何を買ったか、幅広い提携先が共有する。医薬品の商品名まで含まれていた

▼もちろん、利用しなければ心配せずに済む。個人情報を切り売りしているのも理解している。それでも、ポイントをためないともったいない気がする貧乏性

▼情報銀行に違和感があるのも今だけで、そのうち利用するようになるだろうか。紙のスタンプカードを財布にため込んだ牧歌的な時代があった。いつの間にか遠くまで流されてきたことに気付く。(阿部岳)