臨時国会が26日、召集された。安倍晋三首相は衆参各院の本会議で所信表明演説を行い、アベノミクスを加速させ、環太平洋連携協定(TPP)の早期発効をめざす考えを明らかにした。

 安倍首相は演説で「未来」という言葉を随所にちりばめ、看板政策をアピールした。だが、2%の物価目標は達成できておらず、デフレ脱却には依然として遠い。

 大量のお金が市中に出回っているはずだが、その金は消費に回っていない。経済の好循環が実現できていないのは、社会保障の将来像が示されていないため、個人も企業も将来不安から消費を控えているからではないか。

 安倍首相が強調する「未来」は、誰にとっての「未来」なのだろうか。そのことが問われるべきだ。

 「税と社会保障の一体改革」は、安倍首相の2度にわたる消費増税先送りによって事実上、破綻した。社会保障の将来像をきちんと国民に示し、議論を促す必要がある。

 社会保障制度改革は先延ばしできない。

 TPPの行方も混沌としてきた。11月に行われる米大統領選に出馬する民主党のヒラリー・クリントン氏も共和党のドナルド・トランプ氏も、TPPへの反対姿勢を強めている。TPPに関しては、外交交渉を理由に多くの情報が開示されておらず、国民の疑問は解消されていない。

 情報開示がなければまっとうな議論はできない。結論ありきで審議を急ぐのではなく、国民の疑問に答える丁寧な論戦を求めたい。

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 安倍首相は、北部訓練場の一部返還に伴うヘリパッド移設について「県内の米軍施設の約2割、本土復帰後、最大の返還」だと述べ、「もはや先送りは許されない」と強調した。

 首相はヘリパッド移設工事が、地域住民にとって、大きな負担増となる現実を見ていない。高江の集落を取り囲むように建設される6カ所のヘリパッドは米軍にとっては極めて都合のいい移設計画だ。

 不要な土地を返還する代わりに、利用可能な訓練場を新たに開発し、米軍に提供する、という機能強化の構想なのである。

 6カ所のヘリパッド移設だけでなく、高江に近い水域と土地も追加提供される。上陸用舟艇を利用した新たな訓練も実施されるはずだ。

 名護市辺野古の新基地もそうである。普天間飛行場にはない機能を付与することによって「基地の高度化」と「半永久使用」の道を開いた。

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 天皇陛下の生前退位や憲法改正は、国の形を大きく左右する戦後最大の問題だといっていい。それが同時に、国民に突きつけられている。

 安倍首相は「有識者会議で国民的な理解の下に議論を深めていく」と述べ、公務の在り方について検討を始めていくことを明らかにした。

 現行憲法で天皇陛下は「日本国民統合の象徴」と位置づけられている。陛下は象徴とは何かを自らに問い続け、象徴像を打ち立てた。それにどう答えるか、が主権者である国民に求められている。