冷戦時代が終わる直前の1989年に出版され、ベストセラーとなった本に「『NO』と言える日本」がある

▼当時、衆院議員の石原慎太郎氏(元都知事)とソニー会長の盛田昭夫氏の共著だった。政治にしろ経済にしろ、米国の顔色をうかがい、自己主張しない日本の姿勢を批判し、独立国家としての矜持(きょうじ)を持つことの大切さを説いた

▼残念というか、やはりと言うか「『NO』と言えない日本」は健在だったようである。3年前に起きた米軍ヘリ墜落事故で、事故原因が究明されないままの飛行再開に、当時の沖縄防衛局長が米軍に対し「理解できる」との文書を送っていたとの記事(28日付)を読んで思う

▼出先機関トップ自身の意思というより、米国には逆らってはならぬという対米交渉に関わる面々のDNAなのだろう。石原氏らの本の出版から30年近くたつが、米国の呪縛は強まっている感すらある

▼今回のハリアー墜落事故でも、事情は変わらない。事故原因の究明まで飛行停止を求める県議会の抗議決議が可決されたおととい、飛行再開に向けてか、エンジン調整が始まった

▼対米交渉の内幕が明らかになった直後だけに答えにくいことは重々承知しつつ、日本政府の皆さんに素朴な質問を一つ。「沖縄県民の命と、米国の機嫌を損ねないことはどちらが大事ですか?」(稲嶺幸弘)