国立研究開発法人水産研究・教育機構(神奈川県、宮原正典理事長)は28日、沖縄の三大高級魚アカジン(スジアラ)の完全養殖に世界で初めて成功したと発表した。人工飼育下のアカジンの受精卵を用いて、2万9千尾の稚魚の種苗生産に成功。天然魚を使わないことによる資源保全のほか、優良系統の選抜や安定供給で新産業の創出が期待できるとしている。

アカジンの完全養殖のサイクル

完全養殖により育成したアカジンの稚魚(西海区水産研究所亜熱帯研究センター提供)

アカジンの完全養殖のサイクル 完全養殖により育成したアカジンの稚魚(西海区水産研究所亜熱帯研究センター提供)

 近年、アカジンは世界的に漁獲量が減少し適切な資源管理が求められていた。これまでの種苗生産は親魚として天然魚が必要だったため、より天然資源の保全に適した完全養殖技術が求められていた。

 アカジンは誕生時すべて雌で生育過程で雄が育つといい、同機構の西海区水産研究所亜熱帯研究センター(石垣市)が天然魚から生まれた稚魚の人工飼育で雄の育成に初めて成功。雌との交配で得られた受精卵で7月に全長32・9ミリの稚魚2万9千尾(生残率24・2%)を生産した。

 今後、稚魚を1万尾単位で500グラムの出荷サイズまでの養殖試験を行う予定。コスト算出や試験出荷を実施し、産業として成り立つ条件を検討し、県や石垣市と協力し新産業創出を目指すとしている。

 同センターによると、アカジンの国内での取引価格はキロ当たり2500~3500円で、中華圏などでは価格が倍以上。民間企業による市場調査(2013年)では、中国への供給量は年間4千トンで、すべて天然魚だという。

 同機構は、市場価値の高い体色や高成長などの系統選抜ができ、養殖の事業化を進める上で他国と差別化が可能となる―などと成果を強調。「需要を天然魚から養殖魚へ転換させることで、資源にも優しい100億円以上の新たな養殖産業の創出につながる可能性がある」としている。