安倍晋三首相が所信表明演説中に自衛官らをたたえ、自民党議員らが一斉に立ち上がって拍手を続けた。問題は野党の抗議に発展し、識者からも批判が上がるなど波紋が広がった

▼日本の国会の慣例にない行為である。ニュースで繰り返された光景に、異様さを感じた人も多かったに違いない。大島理森議長が議員らを注意した。事後、自民側も「適切でなかった」と認めている

▼このパフォーマンス、「自然発生的」という説明だったが、首相周辺から依頼があり、党幹部から若手議員に指令があったという。5月に「立法府の長だ」と発言し物議を醸した首相が実質的に促したことになり、おごり、ゆるみの厳しい批判もむべなるかなである

▼最終的にほぼ全員が起立している。「安倍1強」の党をそのまま物語っていよう。異論を主張せず、むしろ率先して取り入る。かつて保守からリベラルまで多様な考えがあったといわれるが、見る影もない

▼夏の内閣改造時、「骨格の閣僚以外、パッとしない」といわれた。力量乏しい議員が多く、数はいるが人材不足とも。それでは議員本来の行政府をチェックする責務も果たせないだろう

▼〈人は、無力だから群れるのではない。あべこべに、群れるから無力なのだ〉。今は亡き反骨のルポライター、竹中労さんの言葉を思い出す。(宮城栄作)