ライター仲間のフェイスブック上の本の紹介で見つけた「がん哲学外来」「言葉の処方箋」という言葉に惹きつけられた。国民の2人に1人ががんを患う今、誰もががんに関わっている。早速、本書を取り寄せページを繰った。

KADOKAWA・1188円/ひの・おきお 1954年島根県生まれ。順天堂大医学部病理・腫瘍学教授。一般社団法人「がん哲学外来」理事長。「いい覚悟で生きる」など著書多数

 著者は順天堂大学医学部教授。長くアスベスト・中皮腫を研究してきた病理医だ。外来に出、進行の早い中皮腫の患者と関わるうち、多忙な医療者との間に大きく空く隙間を痛感。患者に寄り添おうと、以前から温めてきたがんを哲学する「がん哲学外来」を創設する。

 この外来では、お茶とたっぷりの時間が用意され、心をかけた患者との対話が行われる。時には患者のベッドサイドで。そして、患者の心の奥底に届き、尊厳に触れる「言葉の処方箋」が選び出される。言葉の源流は著者が傾倒した南原繁、新渡戸稲造、内村鑑三、矢内原忠雄、吉田富三らの名言だ。

 「風貌は一夜にして変えられる」「三十メートル後ろから見守ってくれる人がいれば、人は強く生きられる」「マイナス×マイナス=プラス。マイナスの人間同士が集まれば、プラスに変わることができる」「脇を甘くしてつけ入るすきを与え、懐を深くして感動を与える」「必要なのは正論より配慮。正論は人の数だけある」「『日間(ひま)』があれば、光が射し込む」「八方塞がりでも天は開いている」「暇げな風貌で偉大なるお節介をする」等々。

 置かれた環境、心の在り方で、響く言葉は異なるに違いない。病気の人だけでなく、今を生きているあなたの心にも、言葉の贈り物が届けられるだろう。また、生産性の高低で、人間を評価するこの社会へ向けて、命と向き合う著者から出された処方箋とも言えるのではないか。私たちは、人間の価値を何度でも問いただす必要がある。

 ちなみに「がん哲学外来」は、現在「がん哲学外来メディカルカフェ」として発展、全国80カ所で開設中だ。未開設の沖縄でも、活動開始のきっかけになればとも願う。(新里涼子・学習支援員、フリーライター)