「お父さん、お母さんたちが殺されていく。そばにいてほしいのに」。米ノースカロライナ州に住む黒人の9歳少女が、公聴会で涙をこぼして訴えた。「私たちには人権が必要です。だから抗議しています」

▼全米で、警察官による黒人射殺が止まらない。公聴会のきっかけになった9月の事件は、被害者の妻が撮った動画がある。「どうか生きていて」と繰り返す叫びが耳に残る

▼アメリカンフットボールのスター選手は、試合前の米国歌斉唱で起立するのをやめた。「有色人種を抑圧する国の旗に誇りを示すことはできない」と宣言。賛否両論の渦に向き合っている

▼この選手について、米有力誌が記事を載せた。「日本人じゃなくてラッキーだった」というのだ。君が代斉唱を拒否し、繰り返し処分を受けた教員が「日本なら選手生命は終わり」とコメントしている

▼否定はできない。オバマ大統領は選手による異議申し立てを「憲法で保障された権利だ」と擁護した。片や森喜朗元首相は五輪選手に「国歌も歌えないような選手は日本の選手ではない」と言った

▼米国の差別は深刻で、だからこそ命懸けで立ち上がる勇敢な人々がいる。日本にも差別はある。立ち上がる勇気は、異論を受け止める土壌はあるか。太平洋の向こうの少女とスター選手は、私たちにも問い掛けている。(阿部岳)