私たちの体の細胞で「リサイクル」が行われているという。使われなくなった「ごみ」を取り込み、エネルギーに変える。この「オートファジー」と呼ばれる研究がノーベル賞に輝いた

▼受賞した東京工業大学栄誉教授の大隅良典さん(71)の研究の信念は「だれもがやっていないことを見つけた方が楽しい」だ。周囲が興味を持たない「ごみため」に着目し、生物が生きる根本的な仕組みを解き明かした

▼「人と競争するのが嫌い」「へそ曲がり」。自身をこう表現する。研究費が得やすいテーマに転じることなく、パイオニアとして切り開く道を選び、興味を探求するぶれない姿勢に引きつけられる

▼昆虫好きの少年だったという。生物や科学の本を読むうちに研究者に憧れた。学生結婚し、経済的にも楽とはいえない中で研究生活を送った。教授になったのも51歳と早くはない。決して順風満帆とはいえない研究人生

▼だからだろう。悩める若者へ「自分が何に興味があるのかをよく考えてほしい」というメッセージは研究者でなくとも胸に響く。課題をみつけ向き合うことが、苦境を乗り越えるヒントになるということか

▼大隅さんは子どもたちに「何で」「あれっ」との思いを大事してほしいとも言う。疑問や興味を持つことこそが、新たな発見の一歩になるというエールだろう。(赤嶺由紀子)