昨年12月1日に、ストレスチェック制度が施行されました。一般県民にはなじみが薄いかもしれませんが、この制度はわが国のこころのケア対策において画期的な制度だと、私は考えています。

 この制度では、50人以上の従業員がいるすべての事業所において、ストレスチェックという自記式アンケートの実施と、高ストレス者に対する医師の面接指導が行われます。ただし、50人未満の小・零細企業では、当面の間は努力義務ということになります。

 ちなみに、わが国には約6千万人の勤労者がおり、従業員50人以上の事業所で働く者はその4割、つまり約2400万人がストレスチェックを受けることになります。そして本制度は2次予防(早期発見・早期治療)よりも1次予防(発症予防)をメインに位置づけられています。

 制度が生かされるためには、単なるアンケートに終わらせないことが大切です。面接指導をする医師の役割は重要で、精神科医でなくても産業医相当の医師であればよいのですが、予防のための環境調整や保健指導を行い、必要があれば心療内科等に紹介することになります。この制度のもうひとつの柱であるストレスチェックの職場ごとの集団分析は、職場全体の環境改善にとって不可欠ですが、今回は努力義務にとどまります。

 医師面接における高ストレス者に対するアドバイスは、生活習慣については運動や体重管理、栄養、睡眠、禁煙、飲酒、休養等が挙げられています。ストレス対処法の指導については、行動の工夫として問題解決技法、考え方の工夫として認知行動療法、他にリラクセーション法等を挙げており、うつ病のサインについても具体的に助言することになります。

 ところで、ストレスチェック制度が施行された背景には、精神疾患の増加が挙げられますが、2014年には気分障害の患者数が全国で約112万人に達して過去最高値となり、この18年間で2・5倍の増加です。その中でもうつ病は3・5倍の増加と著しく、ストレスチェック制度のメインはうつ病の予防対策といっても過言ではありません。

 誰でもできるうつ病の予防対策として、1週間前後も睡眠障害が続くと黄色信号ですし、憂うつで何もしたくない、大好きだったのにやる気が起こらない、などはうつ病の赤信号といえましょう。あなた自身、あるいは周りの方にそういう症状がみられたら、温かい声掛けが何より大切です。(仲本晴男 田崎病院)