山口県の山奥、水道も電気もない土地で、大地と共に生きた老夫婦と、その家族の25年を記録したドキュメンタリー映画。主人公は、田中寅夫さん・フサコさん夫妻。戦後すぐ一からやり直そうと山を買い、自分たちの手で切り開くも、子育てのため高度経済成長期に大阪へ移住する。

「ふたりの桃源郷」から

 3人の子を育て上げて還暦を過ぎた頃、残りの人生を開墾した山で暮らすことを決意。畑を耕し草をむしり、野菜を育て湧き水を沸かし窯で飯を炊く自給自足の生活をスタートさせる。

 「自分で食べるものくらい自分で作る」と、老いた体を引きずり、助け合い生きる老夫婦。埋め尽くすコンクリートをハイヒールで踏みしめながら「絶対負けない!」と意気込む出張6日目の朝。東京砂漠を前に、ふと寅夫さんの「土があれば何でもできる」という言葉を思い出した。(桜坂劇場・下地久美子)

 ◇桜坂劇場で10月8日から上映予定