はやりすたりの激しい世の中で、新しいもの、遠くの世界ばかり追いかけがちになるが、地域、地域で昔から積み重ねてきた「本の森」という足もとの宝の山に目を向けてみてはどうだろう。森は深いが奥へ行けば行くほど、知られざる良木があり、人生を左右するかけがえのない出会いも待っている。

「八重山を読む」 南山舎・4011円

 そんな出会いを導いてくれるのが、この「八重山を読む」。明治以後、1999年末までに刊行された八重山に関する単行本581点がジャンルごとに紹介されており、それらの多くは、今では入手困難で、また、そもそも少部数しかない自費出版も含まれている。

 しかも著者とタイトル、発行年、発行所のみを記した単なる書誌目録ではない。それぞれの本が一番伝えたい点を著者が代わりに伝えることを目的に編まれているので、著者名も書名も知らなくとも、心惹(ひ)かれる1冊が必ずや見つかる。個人の伝記やエッセーなどは、その人生や時代背景が立ち上がってくるような紹介文で、どれもみな読みたくなる。

 とはいえ、この「島々の本の事典」も一朝一夕にできたわけではない。著者が最初の紹介文を書き始めたときから発刊に至るまで、30年の月日を要している。郷土への深い関心と愛情に裏打ちされた根気と情熱のなせる技だ。日本の各地域で同様の本が生まれたら、どんなにすばらしいことだろう。

 著者であるジャーナリストの三木健氏のあまたの活躍については、改めて言うまでもないだろうが、高校時代は文芸部の部長だった。若いころからこつこつと収集してきた蔵書から郷土資料など約1万4千点を石垣市立図書館へ寄贈し、それ以前も母校に文芸書など1152冊を寄贈している。

 「自分の原点は島にある」と語る三木氏は、自分を育てた故郷の「本の森」をさらに豊かにしたばかりでなく、その森の中に率先して分け入り、詳細な散策地図も描いてくれたのだ。(大森一也・南山舎編集)