菅義偉官房長官は8日、東、国頭両村長らと名護市で会談し、米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設工事を進め、訓練場の年内返還に向け米側と交渉する考えを明らかにした。

 移設工事が加速すれば、訓練場内に立ち入って抗議を続ける住民との衝突は避けられない。

 日米両政府はこれまで、刑事特別法(刑特法)の適用や沖縄防衛局職員による「私人逮捕」、県警による逮捕権行使などの適否について検討を進めてきた。ここに来て菅官房長官が「年内返還」を明言したということは、妨害行動を排除するための方法について、日米が合意に達した、とみるべきだろう。

 7月22日の工事再開以来、現場で目につくのは法律の拡大解釈、恣意(しい)的な解釈である。違法な疑いの強い交通検問。市民が設置したテントの一方的な撤去、自衛隊法には定めがないにもかかわらず防衛省設置法を恣意的に解釈して実施した自衛隊ヘリの投入。

 日米両政府はなぜ、そこまでして工事を急ぐのか。なぜ、しゃにむに工事を強行しようとするのか。

 米海兵隊は7日から、沖縄本島沖に墜落した米海兵隊の攻撃機AV8Bハリアーの飛行訓練を再開した。事故原因も究明されていないというのに、政府がお墨付きを与えたのだ。

 住民の不安解消や被害除去、自治権がないがしろにされ、軍事上の必要性が優先されるという植民地的状況は今も変わらない。

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 北部訓練場は、ほぼ半分に当たる約4千ヘクタールが、6カ所のヘリパッド移設を条件に返還されることになっている。

 北部訓練場の半分返還や普天間飛行場の全面返還が負担軽減の側面を持つことを否定するものではないが、負担軽減だけを強調するのは、あまりにも一面的だ。

 辺野古の海を埋め立て、普天間飛行場にはない新たな機能を備えた恒久的な飛行場を建設することは、米軍にとっては願ってもないことだが、沖縄にとっては大きな負担である。

 北部訓練場の不必要になった土地を返還し、日本の予算で上陸訓練も可能な高規格の訓練場として整備することは、米軍にとっては願ってもないことだが、住民にとっては大きな負担だ。

 生物多様性の豊かなジュゴンのすむ海をなぜ、埋め立てなければならないのか。なぜ貴重な動植物がすむ森に、高江の集落を取り囲むように、ヘリパッドを建設しなければならないのか。

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 米軍再編計画は、基地を中北部に集中させ、恒久基地化を図る計画である。

 日米合同委員会という住民不在の密室で基地の運用全般が決定され、自治体も住民も決定に従うだけというのは、あまりにも理不尽である。

 今も続く植民地的状況に謙虚に向き合うこと。それが出発点だ。沖縄に基地を押しつけ、本土は被害の実態さえ知らず、安全保障の利益だけを享受する、という日本と沖縄のいびつな関係を清算する時である。