政府は「過労死等防止対策白書」をまとめた。

 過労死等防止対策推進法は過労死対策を「国の責務」と定めており、同法に基づく初の白書である。

 過労死がそのまま英語の辞書に収録されて久しい。日本は年間の労働時間がドイツやフランスなど欧州に比べ約300時間多いとされ、いかに長時間労働の国かがわかる。

 企業と労働者を対象にしたアンケート結果を白書に盛り込んだ。過労死ラインの月80時間以上の残業をする正社員がいる企業が23%に上った。労使ともに深刻に受け止めなければならない。

 白書では2015年度、過労自殺(未遂含む)した93件が労災認定された一方で、勤務問題を原因の一つとする自殺は2159件との警察庁のデータを掲載。労災認定数だけでは過労自殺の実数がつかめないことがうかがえる。

 労働基準法では原則1日8時間、週40時間を働く時間の上限としている。だが、労使が同法36条の「三六(サブロク)協定」を結べば残業は事実上無制限だ。

 白書公表の日、昨年12月に自殺した広告大手の電通に勤めていた女性新入社員=当時(24)=がうつ病発症前の1カ月の残業時間が約105時間に達し労災認定されたことが明らかになった。電通では1991年にも入社2年目の男性社員=当時(24)=が過労自殺している。会社の責任を認める司法判断の節目となった事案である。それを繰り返した会社の責任は重い。

 長時間労働は心身ともにむしばむ。過労死は若年層にも広がっているとされ、法規制に乗り出す時期ではないか。

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 長時間労働は県内も例外ではない。教職員を例にとると、沖教組は小中学校を中心とした教職員アンケートで3割近くの教職員が超過勤務の月80時間の過労死ラインを超えているとの推計を公表した。

 教育現場を預かる10人に3人である。尋常ではない。

 それとは無関係ではあるまい。2014年度に病気で休職した県内の公立学校の教職員は420人で全国平均の3倍以上と突出し、8年連続で全国ワーストとなる見通しである。このうち、精神疾患による病休者は174人に上る。病休者の約4割である。

 公立学校の教員は、月額給与に4%分を上乗せする教職調整額があるため、超過勤務手当が出ない事情もある。

 国は教職員の増員や学級の少人数化を急ぐとともに、県教委や市町村教委は土日を返上して指導に当たる部活動の在り方などを見直し、負担軽減に取り組むべきだ。

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 政府は「働き方改革実現会議」を発足させ、働き方の議論を本格化させている。長時間労働を是正し、非正規労働者の待遇を改善する「同一労働同一賃金」が柱だ。

 長時間労働の抑制は、育児や介護と仕事を両立させることにつながり、女性の社会進出にも影響を与える。

 会議は月1回のペースで開き、来年3月までに実行計画をまとめる。残業時間の制限に関しては労使の利害が対立しそうだが、労働者の命と健康を守ることを最優先し、合意形成に努めてもらいたい。