判決に正直、驚いた。裁判官には、時代や世の流れは見えていないのだろうかと。都内の私立学校の女性教諭が職場の文書で旧姓の記載を認めてほしいと、学校側に求めた訴訟である。東京地裁は11日、請求を退けた

▼女性は、教室では旧姓を名乗り、生徒や保護者からも旧姓で呼ばれているという。慣れ親しまれている名前、それを通知表や保護者へのお知らせなどの文書で使わせてとの願いが、なぜかたくなに拒まれるのだろう。疑問を禁じ得ない

▼判決は、旧姓を使う利益は法律上保護されると言いながら、職場で「戸籍上の氏名の使用を求めることには合理性、必要性がある」として棄却した。旧姓の使用が「社会に根付いているとまでは認められない」との認識も示した

▼企業であれ、公務員であれ旧姓使用を認める動きは着実に広がっている。女性の活躍推進に向けた政府方針も、旧姓使用の拡大を位置づけた。ちょっと周りを見渡せば分かりそうだが、判決は後ろ向きである

▼旧姓使用について最高裁は昨年、「社会的に広まることで、改姓することの不利益は一定程度緩和される」との考えを示した。この考えとも整合せず、後退した判決と指摘されても仕方ない

▼最近、社会が築き上げてきた価値観や権利をないがしろにする判決が続いている気がして、何か落ち着かない。(宮城栄作)