本書から強烈な刺激を受けた。気の遠くなるような膨大な資料や文献の分析と整理、原告79人の被害体験の聞き取り、そして精神科医師による39人の診察および37人の外傷性精神障害の診断等々、弁護団長である編著者の並々ならぬパワーと情熱そして繊細さを感じる。79人の沖縄戦証言は本書の半分を占める270ページに及ぶ。

高文研・5400円/ずけやま・しげる 1943年南洋群島パラオ生まれ。弁護士。46年沖縄県に引き揚げ。66年琉球大卒。千葉県弁護士会会長、日本弁護士連合会理事など歴任。共著に「未解決の戦後補償2 戦後70年・残される課題」など

 編著者は1歳の時、戦禍に遭い奇跡的に助かったが姉と祖母を失った。大学卒業後は、東京へ出て弁護士となり、「東京大空襲訴訟」「大阪空襲訴訟」にも関わった。いわゆる、編著者自身戦争被害者であり、長きにわたって中央から沖縄を見てきた。それ故、凄惨(せいさん)な沖縄戦そして現在も続く国家の沖縄に対する「不平等扱い」「差別政策」がより客観的に見えるのではないか? それが今回の訴訟での猛烈なエネルギーにも繋(つな)がっていると思わせる。

 本書は、今年3月に刊行した『法廷で裁かれる沖縄戦【訴状編】』の続編だ。【訴状編】は国に対する国家賠償責任を追及し、理論的主張と被害事実の概略を軸とした内容だったが、本書は国の責任を追及する理論の正当性を基礎づけるため、被害事実の全容について提出した328件の証拠をまとめたものである。編著者は本書の目的を、「直接的には原告らの戦争被害の深刻さに照らして請求棄却判決の不当性を明らかにすること」「日本軍の残虐非道な行為及び凄惨な地上戦被害の実態を記録して【訴状編】と一体の書籍として、世に明らかにし後世に伝え、歴史的に国の法的責任を告発し続けることにある」と説明している。

 「沖縄戦被害・国家賠償訴訟」は、2012年8月15日に訴訟を提起、今年3月16日に原告の請求をすべて棄却する判決が出された。本書と「訴状編」を読む限り、何故「棄却」なのか、本当に「司法」の目で判断したのか、私には理解し難く怒りと疑問だらけだ。

 沖縄戦体験者そして世代を超えて負の遺産に翻弄(ほんろう)されている沖縄戦とは一体何だったのか。本書と「訴状編」はそれに答え得る必読の文献となっている。(當山冨士子、沖縄戦・精神保健研究会代表)