約20年前に訪ねたタイ。沖縄とは歴史や文化、生活習慣は違うが、滞在中に出会ったタイの人たちはウチナーンチュのような顔立ちの人も多く、親近感を感じた。人懐こい笑顔が印象に残っている

▼街の食堂で、壁やテーブルに同じ男性の写真や肖像画がたくさん飾られているのを見た。有名な映画スターかと思ったが、プミポン国王だと教えてもらった

▼食堂のような光景は街の至る所で見られ、珍しくないとすぐに分かった。それほどタイ国民から敬愛されていた国王が亡くなった。88歳。世界の君主でも在位期間70年は最長だ

▼暫定政府は国王が亡くなった翌日を特別の休日に、服喪期間を1年間と発表、国民に娯楽を控えるよう通達した。通りを歩く人々は黒い服を身に着けて死を悼んだ。ほほ笑みの国は深い悲しみに包まれている

▼国王は「王室プロジェクト」と呼ばれる社会活動によって、農村振興や貧困対策などに取り組み、生活向上に貢献。立憲君主制だが政治危機の際、たびたび仲裁に乗り出し事態を収拾し、国民から絶対的な支持を得た

▼皇太子が国王に即位する予定だが、国民の尊敬を集められるか分からない。軍事政権と、対立するタクシン元首相派の動き、今まで国王個人の力に頼っていた国民の意識もどう変わっていくのか、タイ情勢から目が離せない。(玉寄興也)