市場のにぎわいや作業中の陶工、赤瓦の家が並ぶ集落、空手を習う人々…。県立博物館・美術館で開催中の「日本民藝館80周年 沖縄の工芸展」に入ると、戦前の沖縄の写真がひときわ目を引く

▼日本民藝協会が収集し、戦禍を免れた焼き物や織物などと一緒に展示された写真は約200点。写真家の坂本万七氏が1940年、民藝協会の沖縄文化調査に同行し撮影した。当時の暮らしぶりや人々の息遣いが感じられる

▼民藝協会の柳宗悦氏は、沖縄の工芸品に美や価値を見いだした。しかし沖縄は、国家総動員体制の中で過酷な「日本化」政策の渦中にあった。伝統文化を否定され、言葉まで撲滅されようとしていた

▼柳氏が「美の宝庫」とたたえた沖縄を、戦争は根こそぎ破壊した。地形も変わるほど徹底的に。写真を見ていると、戦争は人間否定の極みであることを痛感させられる

▼沖縄戦直後に北部で発行されていたが現物がなく、幻の新聞だった「新沖縄」の原紙が見つかった(17日付本紙)。戦後初の民間人による新聞は、古美術収集家の翁長良明さんが元米民政府職員から譲り受けた膨大な資料の中にあったという

▼「沖縄再建」の文字が躍る紙面から伝わるのは、荒れ野と化した沖縄で立ち上がろうとする人々の姿だ。先人の遺産は想像力をかき立てる。未来を考える糧になる。(磯野直)