今回紹介する本は、現在品切れ中であるが、編集者として思い入れの強い本の一つである。

歌三線の世界 古典の魂(ゆい出版・2160円)

 本書は、野村流工工四の上巻・中巻・下巻・拾遺に収録された琉球古典音楽全曲の解説をしたものである。一曲一曲の本歌、あるいはその曲に付いている歌詞も収録し解説をしている。

 300を超す曲それぞれの持つ曲想(節情思入)を著者は大切にし、歌詞の意味だけでなく曲の特徴そのものにもこだわって本書を著した。頭でなく心で感じた曲想を表現しておきたいのだという。

 編集者としてこの本との関わりは、楽しくもあり、難しくもあった。本書に収録した全ての琉歌にルビを振ることを決め、作業に入ったのはいいが、かなり難渋したことは確かである。

 琉歌の表記と発音は全く違うといってもいい。また、琉歌の発音を表現するには現在の五十音表記では不可能に近い。私の子供の頃は、「ゐ」や「ゑ」が五十音表に残っており、その発音もできた。しまくとぅばにはその音が残っている。「つぃ」「てぃ」「とぅ」「ふぁ」など発音に近い表記法を見つけながら一つ一つルビを振っていった。

 しまくとぅばの表記には、どの編集者も苦労しているだろうと思う。初版発行後、多くの方々から貴重な指摘をいただいた。版を重ねながらその都度訂正をして、対応してきた。

 本書は、古典音楽を学ぶ人にとって格好の書である。ただ、発行人の都合で長いこと売り切れ状態で申し訳ない気持ちである。問い合わせも多く、それに応えきれていないことに忸怩(じくじ)たる思いがある。

 早い時期に再版できるよう発行人として取り組まなければならない。それが本書を求める読者の要望に応えることでもあり、著者の本書に込めた思いを広めることにもなる、と決意を新たにしている。(松田米雄・ゆい出版編集発行人)