「日本人の乗客の皆さまにおわびします。本日は多数の外人のお客さまにお乗りいただいており、大変ご迷惑をおかけしております」。今月10日、関西空港に向かう南海電鉄の車内で車掌がアナウンスした

▼たまたま、那覇市の横山知枝さん(45)が乗っていた。「なんだそれ?」。思わず声に出たという。会社に「明確な差別ですよ」と抗議したことをツイッターに投稿。それが広がり、各メディアが報じた

▼会社は「差別の意図はない」と釈明した。外国人客に「邪魔だ」と罵声を浴びせる乗客がいたため、トラブルを避けようとしたのだという

▼横山さんは怒る。「なぜ差別主義者の乗客を注意せず、『外人が迷惑』とマイノリティーをさげすむことになるのか」。ネット上でも外国人客への攻撃が目立った

▼大阪府の松井一郎知事が機動隊員の暴言を擁護した構図とそっくりだ。圧倒的な力の差を無視して、「相手もむちゃくちゃ言っている」と「どっちもどっち」論に持ち込む。ヘリパッド建設を強行しているのは政府なのに、「混乱を引き起こしているのはどちらか」と事実の誤認を混ぜ込む。問題の根本を差別と認めず、「不適切」で済ませるところも同じ

▼弱者をたたく。声を上げるなら、たたいて黙らせる。二つの事件の符合に、今の日本の病んだ空気を思い知らされる。(阿部岳)