米側が基地を返還する場合に、原状回復義務が免除されている。汚染されていても原状回復義務は日本政府が負う。これを許しているのが日米地位協定である。

 この不平等な地位協定に、さらに輪を掛けるような米軍の内部文書が明らかになった。「隠蔽(いんぺい)の指示」というほかない内容だ。

 米軍由来の環境問題を追及している本紙特約通信員のジョン・ミッチェル氏が情報公開請求で入手した米軍普天間飛行場の「環境事故対処ハンドブック」である。

 その中で米軍は「緊急でないか、政治的に注意を要する事故」は、日本側に通報しないよう命じている。

 「緊急でない」かどうか、それを判断するのは米軍であり、通報するかどうかも米軍の裁量次第である。

 「政治的に注意を要する事故」とは何なのだろうか。県民の反基地感情が高まり、政治問題に発展する事故、つまり、深刻な環境事故ということではないのか。

 住民の視点が欠落しているばかりか、環境事故を「なかったことにすること」を意味し、許されない。

 環境事故が及ぼす影響はフェンス内外を選ばない。環境事故が起これば基地周辺の住民が直接的な被害を受ける。

 自治体が環境事故現場へ立ち入り調査をすることができず、情報へのアクセスが制限されているのが現状だ。

 そんな中で都合が悪いと米軍が判断すれば通報しないのは、住民の生命や安全をないがしろにするものである。

■    ■

 ミッチェル氏は「隠蔽の指示」を裏付けるような海兵隊の内部文書も入手している。普天間飛行場では2005年から16年の間に少なくとも156件の流出事故が発生しているが、日本側に通報されたのはわずか4件にすぎない。

 通報された環境事故も問題をはらむ。事故を矮(わい)小(しょう)化して伝えているからである。

 普天間飛行場で今年6月15日午後、航空機用燃料タンクから最大で約6908リットルが漏れ出したとの通報があった。

 米軍は「即座に」対処したと説明したが、事故が完全に収束したのは翌日で、その後、3028リットルの汚染水とドラム缶(208リットル)11本分の汚染土を廃棄していた。

 「情報隠し」は普天間に限ったことなのだろうか。そうではあるまい。嘉手納基地でも10~14年に流出事故が206件発生したが、通報は23件にすぎないことをミッチェル氏が突き止めているからだ。

■    ■

 政府は「隠蔽の指示」の事実関係を米軍にただし、環境事故の大小にかかわらず日本側に通報する体制を構築すべきだ。基地の汚染履歴も開示させなければならない。

 ドイツは緊急時に通告なしで立ち入り調査ができる。ドイツのように国内法を適用させるにはやはり、米軍に排他的管理権などを与えている地位協定の改定が必要だ。

 15年に日米両政府が締結した環境補足協定では、立ち入り調査の申請には「米側からの通報」が前提だ。その通報がない中で、どう調査できるというのか。環境補足協定の欠陥が露呈している。