米軍北部訓練場へのヘリパッド建設に反対する市民に向かって大阪府警機動隊員が「土人」「シナ人」などと暴言を吐いたことに対し、県議会は28日、臨時会を開き、抗議決議と意見書を与党などの賛成多数で可決した。

 野党の自民党はこの抗議決議と意見書に反対し、独自の意見書案を提出した。

 否決された自民案も機動隊員の発言が「不穏当」「不適切」だったことは認めているものの、警察官に対する反対派の発言を列記し、「警察官の人格、尊厳を傷つける発言は問題とせず、警察官の発言のみを取り上げることは、あまりに一方的」だと指摘している。

 売り言葉に買い言葉のようなものなのだから一方だけを批判するのはおかしい-と言いたいのだろうが、今回のケースは私人と私人、集団対集団の喧嘩(けんか)騒ぎではない。

 1人の機動隊員は「どこつかんどんじゃ、ぼけ。土人が」と発言した。もう1人の隊員は「黙れ、こら、シナ人」などと語った。

 法務省人権擁護局が中心になって、インターネットを悪用した人権侵害や街頭でのヘイトスピーチ(憎悪表現)をなくすキャンペーンに取り組んでいるその足元で、人権擁護の番人であるべき警察官が、公務中に、「土人」「シナ人」という差別用語を使って、市民をののしった。

 それがことの本質だ。弁解の余地はない。決して喧嘩両成敗(せいばい)で処理できるような軽いものではない。問われているのは人権感覚であり、足元における人権教育である。

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 大阪府警が20代の2人の隊員を急きょ、大阪に戻し、「警察の信用を失墜させた」との理由で戒告の懲戒処分にしたのは、暴言を深刻に受け止めたからである。

 この一件は憲法違反、警察法違反の疑いがある。

 憲法は集会・結社・表現の自由を保障し、差別を禁じている。立憲主義の立場に立って大臣や国会議員、公務員などに対し、憲法を尊重し擁護する義務を課している。警察法第2条2項はこの法律の中でもとりわけ重要だ。

 「その責務の遂行に当たっては、不偏不党かつ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用(らんよう)することがあってはならない」

 辺野古問題で県と政府が対立する構図が続いており、ネット上では「沖縄ヘイト」とも言うべき露骨な沖縄たたきや事実に基づかないデマ情報が飛び交っている。

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 街頭でのヘイトスピーチやネット上の罵詈(ばり)雑言に接した機動隊員が、知らず知らずのうちに影響を受け、そのような考えを内面化しているとすれば、日本の人権擁護の取り組みは極めて危うい。

 政府が話し合いに応じ、県との妥協点を真剣に模索しない限り、沖縄の状況は良くならない。

 それを放棄し、話し合いにも応じず、工事だけを強行すれば、市民の反対が強まり、沖縄ヘイトも過熱するだろう。政府が沖縄ヘイトを助長することになるのだ。