「街歩き好きの君なら、きっと楽しめると思うよ」と知人に本書を勧められたのだが、最初は意味が分からなかった。思えば、幼いころは「ゲゲゲの鬼太郎」が大好きで、妖怪大図鑑を読み耽(ふけ)り、そのまま枕元に置いて寝るような子供だった。いつしか妖怪や幽霊のことなど、思い浮かべることすらなくなっていた。だから、著者のお名前と琉球怪談シリーズは存じ上げていたのだが、これまで未読だったのだ。もっと早めに読んでおけばよかったなと、気付かされたのだった。

ボーダーインク・1080円/こはら・たけし 1968年京都生まれ。作家。フィールドワークはマジムンとウタキと怪談。「琉球怪談」「七つ橋を渡って」など著書多数

 本書は、著者が怪談取材を続けるなかで遭遇した不思議な出来事を綴(つづ)った第1部と、沖縄のマジムンの伝承をさまざまな角度から検証した第2部という2部構成になっている。そこでは、琉球怪談にはつきもののユタ、御嶽、沖縄戦の幽霊、そしてマジムンが軽妙に生き生きと語られている。

 さまざまなエピソードと論考を読みながら、あることに気付く。マジムン伝承には、ほぼ必ず、出現した「場所」が具体的に記されているのである。しかも、そのほとんどは私も訪れたことのある場所だった。私は、古地図や微地形地図などをタブレットPCに入れて持ち歩きながら、今も昔も変わらない場所を探し歩いたりしていた。本書でも紹介されているガーナームイ、七つ墓など、まさか、マジムン伝承の残る場所でもあったとは、知らなかった。

 私には霊感と呼ばれるものがカケラも無いが、かつての様子を思い浮かべながら歩くことで当時の人々が抱いた自然への畏怖を想像することはできた。森の中、海辺、川辺、墓地、路地など、その土地の環境によって喚起されるイメージがある。開発を免れ、残ってくれたからこそ、今でもその場所に行けばマジムンを感じることができる。

 日々、スマホで拡張現実を楽しむ諸兄におかれましては、ぜひマジムンもゲットしてみよう。きっと、本書がその手引書となってくれるであろう。(普久原朝充・建築士)