本屋に泊まる。ただそれだけの、そして魅力的なツアーが29日深夜から開かれた。友人同士やカップル、親子など10組20人が寝具や折り畳み椅子を抱えて集まった

▼本屋ではいつも時間が足りない。そんな本好きの要望に応えたジュンク堂書店の企画。2年前、初めて東京で開いた時は3組の募集に対して3千組近い応募があったという。ことし初めて那覇店が会場になり、体験させてもらった

▼午後11時前、裏口から店内へ。外出時間などの説明を受け、眠る場所を決めたら早速各フロアに散る。全ての棚を回る人、1カ所で根が張ったように動かない人、さまざまだ

▼那覇店の棚には100万冊の本があるという。全国の書店の中でも5番目に多いと聞いて驚いた。今夜ばかりは通路で座り込むのも自由。人が少ないこともあり、膨大な本と知識が全て自分のものになったような錯覚で胸が高鳴ってしまう

▼警察官向けの捜査指南書。普段足を運ばない専門書コーナーが実はおもしろくて時間を費やす。ポスト構造主義。タイトル自体がよく理解できない棚を眺めては、一生かかっても届かない学問の深みを知る

▼午前8時に店を出るまで本の森をさまよい、偶然の出会いを楽しんだ約9時間。やはり時間は足りなくて、結局一睡もしなかった。ツアーは来年も開催を検討するそうです。(阿部岳)